第45回
業界での地位が高い部署と低い部署
炭鉱会社とエンドユーザーの直接取引化が進む中で、
石炭業界における商社の地位はどんどん低下しています。
何とか役に立つ事をアピールして、
エンドユーザーにシェアを付けてもらう、
という立場になっています。
今では変わりましたが、私が丸紅に入社した当時は、
商社の人間は毎日御用聞きの様にエンドユーザー各社を回り、
購買担当者の方に面会を求めます。
購買担当者の方が忙しかったり、他の商社と話している間は、
何時間でもずっと待っていなくてはなりませんでした。
業界の慣習により、よっぽどの用事が無い限り、
購買担当者の方のアポイントを取る事は許されませんでした。
そんな感じで昼間はずっと外回りをして、
午後6時頃からデスクワークを始め、
夜遅くまで残業する、という毎日でした。
しかし、エンドユーザー各社からして見れば、
自分で出来る事は自分でやって、商社に払う口銭を節約したい、
と思うのは当然の事です。
「自分でやるから、丸紅さんはもう要らないよ」と言われて、
心の中では「ごもっとも」と思っていても、
「いや、そうおっしゃらず」と言わなければいけない様な営業を
ずっとしてきたせいか
「人の役に立って、人から感謝される様な仕事が出来たら
どんなに楽しいだろう」という気持ちがいつも心の底にありました。
もちろん商社の仕事は、
こういったお客さんから邪険にされる口銭商売だけでは無く、
投資案件や口銭商売の中でも実際に役に立って、
お客さんに感謝されて間に入っている商売もあります。
たまに同期と飲んだりすると
「業者が接待させてくれってうるさいんだよ。
こっちは疲れてるからって断ってるんだけどね」などという、
耳を疑うような話が出てきたりします。
同じ会社の同期なのに、私の立場はその「業者」そのものです。
会社の中にいると、苦労したからといって、
後で昇進して良い目に合える訳では無いですし、
楽な部署にいたからといって、出世しない、という事もありません。
むしろ、業界での地位が低い部署ほど苦労する割には出世せず、
業界での地位が高い部署にいれば、
仕事が楽な上に出世する機会にも恵まれます。
かと言って、業界での地位が高い部署を希望しても、
みんながみんな、その部署に配属される訳ではありません。
これはサラリーマンなら誰もが思う事だと思うのですが、
こんな運任せの人事に自分の人生を託すのはリスクが高すぎます。
これも私がサラリーマンを辞めようと思った理由の一つです。
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