第46回
働き盛りの10年間は自分の為に使いたい

会社を辞めたもう一つの理由は、
「働き盛りの10年間は自分の為に使いたい」
という気持ちが強かった事です。
私は社会経験も積み、体力もまだある35歳から45歳が、
人間、一番の働き盛りなのではないかと考えています。
人生で1度しかないこの黄金の10年を
石炭ビジネスに捧げていいのか、丸紅に捧げていいのか、
と考えると、う〜ん、良くない様な気がしてしまいました。

やはり、この10年は自分の為に使いたい。
会社を自己実現の為に利用出来るなら、
それはそれで、会社に残って頑張る価値があるのですが、
私はどうしてもそういう風に考えられませんでした。

サラリーマンを続けていく事は、毎月安定した収入があり、
確かにリスクが少ないのですが、
その代償として「先がある程度見えてしまうつまらなさ」も
抱え込まなければなりません。
一言で言えば「夢が無い」という事です。

独立起業すれば、一文無しになるリスクもありますが、
大儲けして、サラリーマンを続けていては
絶対に手に入らない様な生活を手に入れられる可能性もあります。
もちろん、そんな大きな成功を掴めるのは、
ほんの一握りの人だけであるのは分かっているのですが、
少なくとも、希望を持ちながら、夢に向かって一生懸命働く事は、
非常に楽しい事なのではないでしょうか。

又、独立起業すれば、お金の面だけでなく、
会社の進む方向やポリシーも自分で決める事が出来ますので、
自分が理想とする商売の姿を実現させる事も可能になります。

例えば、石炭業界では、
商社はエンドユーザーから契約数量に応じて、
トン当たり幾らで口銭をもらいます。
しかし、景気が低迷すると、エンドユーザーは購買量を減らし、
サプライヤーである炭鉱会社も
「こんなに安いなら、余りたくさん売りたくない。
市況の回復を待ちたい」となる訳です。

しかし、商社にとっては数量減イコール収入減ですから、
エンドユーザー、炭鉱会社の双方を煽って、
何とか契約数量を増やそうとしたりします。

お客さんあっての商社なのに、
これでは業界からの退場を宣告されても仕方が無いのかな、
と常々思っておりました。
「そんな理想論だけじゃ、飯は食えないんだよ! 」
と言われれば、確かにそうなのですが、
「誰かの役に立って、初めて長続きする商売になる」
というのが、私の考えですので、
自分の会社では、この原則に従って商売をして行こうと
思っています。


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