弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第739
事実婚だった女優の子供の相続

前回、事実婚の夫婦の夫が死亡した場合、
事実婚の妻は相続権がなく、
戸籍上の妻に比べて不利益を受けるという話をしました。

今回は、法律上、両親が籍を入れていないと
その子供も不利益を受けるという話です。

戸籍を入れていない夫婦の子供でも相続権があります。
したがって、事実婚の夫の子供が
事実婚の夫婦間の子供のみであれば子供が何人いても、
特に子供同士に差が出ることはありません。

全ての子供が事実婚の子供として、
平等に遺産を相続することとなります。

しかし、夫に、前妻がいて前妻とは籍を入れており、
その前妻との間にも子供がいた場合、
法律上は、事実婚の夫婦の子供は
法定相続分で不利益を受けることとなっています。

具体的には、事実婚の子供は、
戸籍上の妻の子供と比べて法定相続分は2分の1となります。

ネットのニュースで見ると、
今回取り上げた女優さんの事実婚の夫には、
籍を入れた前妻との間に3人の子供がいて、
女優さんとの事実婚の子供1人、
他に籍を入れていない女性との
子供1人の計5人が相続人のようです。

そうなると、5人の子供の相続分は、
2:2:2:1:1となりますから、
具体的には遺産の4分の1、4分の1、4分の1、8分の1、
8分の1となります。

このように、親が戸籍上結婚しているか、事実婚かで、
現行民法では、子供の相続分に差が出ることとなっています。

この点については、同じ子供なのに、
親が戸籍上結婚しているかいないかで、相続分が異なるのは、
子供を差別する取り扱いだという批判もあります。

そこで、親が結婚していない子供の相続分を
少なくしている民法の規定は、憲法の平等原則に違反し、
無効だと主張されています。

以前お話ししたとおり、憲法違反という判決を
最高裁が出すのではないかと言われてもいます。

しかし、現時点では、
憲法違反という最高裁判決は出ていないので、
民法によると、事実婚の子供の相続分は少なくなってしまいます。


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2012年4月19日(木)

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