弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第649回
分割払いの約束にご注意

お金を貸したときや物を売ったとき、
その支払いは、通常は一括払いになっています。

しかし、相手にお金がないという場合には、
本当は一括払いだけれども、
仕方がないので、それでは分割払いでもよいということで、
分割払いの約束をすることも多いと思います。

この分割払いの約束をするときは、注意が必要です。
というのは、分割払いの約束通りに
相手が支払ってくれればよいのですが、
分割払いの約束をしたにもかかわらず、
その分割金でさえ、支払われなくなることはよくあります。

この分割金が支払われなくなったときに、
残りの分割金は、
どうなるのかについて、考え方が2つあるからです。

例えば、500万円を、
10万円ずつの50回分割払いの約束をしたとしましょう。

10万円ずつ10回支払ったところで、
支払が止まってしまいました。

残りの400万円については、
40回分割払いのままなのか、
それとも400万円一括で支払うことになるのかということです。

みなさんは、支払を怠れば、
一括払いになるとお考えになる方がほとんどだと思います。

しかし、貸金業者からの借金や
リース料などが1回支払いを怠ると、
残金が一括払いになるのは、
契約書にそう書いてあるからです。

だから、みなさんが分割払いの約束をするときに、
1回でも支払いを怠ったときは、
残額を一括で支払うと約束すれば、
支払が止まったときには、残額を一括で請求はできます。

しかし、契約書も交わさず、
分割金の支払いが停止されたときには
残額は一括払いになるという約束をしなかった場合には、
先ほど言った通り、分割払いのままなのか、
一括払いになるのか考え方が分かれているのです。

一括払いになるという判例もありますが、
そうではないという判例もあります。

そこで、分割払いの約束をするときには、
合意書を交わして、分割金の支払いを一回でも怠ったときは、
残額について一括で支払う
という文言を入れておいた方が良いのです。

この文言(「期限の利益喪失約款」と言います)
を入れておかないと、
分割金の支払いが止まって裁判を起こそうとしても、
分割金のうち期限が来た部分しか請求ができない
ということになってしまう可能性があります。


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2011年5月3日(火)

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