弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第599回
大阪市が地代増額を求めUSJを提訴

読売新聞によると、大阪市が、
USJ(「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」)
に貸した土地の地代の増額を求め、
訴訟を起こしたということです。
USJの土地は、大阪市が貸しているんですね。

土地の賃料や、オフィスや店舗の賃料は、
裁判で増額を求めることができます。
 
もちろん、土地の価格が値上がりしたとか、
固定資産税が上がったとか、
周辺の賃料が上がったなどの事情が必要です。

具体的な手続としては、
まず、一定の時点からの賃料の値上げを請求します。

相手が応じなければ、
貸主は賃料の値上げを求める調停を起こします。
賃料の値上げについては、
裁判を起こす前に調停を申し立てなければならない
という調停前置主義が取られているからです。

賃貸借契約は、
貸主借主が長期にわたってお付き合いをする関係なので、
いきなり裁判を起こして角を立てず、
まずは話し合いをしましょうというのが、その趣旨です。

調停をして、話し合いをしても、
双方折り合いが付かなければ、
調停は不調(不成立)となります。

そこで、貸主の方が、賃料増額を求めて、
裁判を起こすことになります。

大阪市のケースは、このような経過を辿って、
大阪市が提訴したということです。

裁判では、裁判所が選んだ不動産鑑定士が、
賃料の鑑定を行います。
裁判所は、貸主借主の当事者間で特殊な事情がなければ、
この不動産鑑定士が算定した賃料により、賃料の額を決めます。

この賃料増額の裁判では、
賃料が周辺相場まで引き上げられることは少ないです。

例えば、現在、賃料が80万円で、
周辺相場や適正賃料が150万円だったとしても、
裁判所の鑑定では、
80万円と150万円の差額である70万円を2で割り、
35万円の値上げ、即ち115万円までの
賃料増額しか認めないのです。

この方法は、差額配分法と呼ばれ、継続的な賃貸借契約では、
急激な賃料の増額を防ぐために、
裁判では広く利用されています。

貸主には、不満が残る方法ですが、
借主にとっては、ありがたいということになります。


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2010年11月4日(木)

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