第598回
不動産ファンド販売で証券会社が賠償責任
以前このコラム(第492回)で取り上げた
金融商品である不動産ファンドを販売した
証券会社に対する損害賠償請求訴訟に対する判決が、
先日出たようです。
そのときは、訴訟を起こしたということを取り上げましたから、
訴訟を起こして約1年かけて判決が出たということになります。
どういう商品だったかと言うと、
個人投資家から投資資金を集めて、
さらに、その3〜4倍の資金を銀行から借り入れて、
レバリッジを効かせて、不動産に投資するものだったようです。
そこで、投資した不動産価格や賃料が値上がりすれば、
借入で投資した分まで利益が出るので、
高利回りが実現できるけれども、
値下がりした場合には、
銀行からの借入が優先的に返済されるので、
顧客の投資資金が失われる可能性が高い
リスクの高い金融商品だったようです。
492回で説明したように、銀行借入が投資資金の4倍、
即ち、8割とすると、
不動産価格が1割下がれば投資資金は半分になり、
2割下がれば、投資資金は0になるという
ハイリスクな商品だったわけです。
ネットで見た産経ニュースによれば、判決は、
「不動産の値下がり時には、
リスクが極端に増大することを説明する義務があった」
と説明義務違反を理由に、損害賠償責任を認めました。
金融商品の販売には、リスクの説明が必要となっています。
リスクの説明を受けずに投資をしてしまって損をした場合には、
このケースのように賠償請求をすることができます。
ただ、判決は
「高利回りには、その反面高いリスクが伴うことは理解できた」
として、投資家の過失を3割認めて、
賠償額は、失った投資資金の7割としました。
これを「過失相殺(かしつそうさい)」と言って、
被害者の過失も損害額に反映されるものです。
投資に関する損害賠償請求の他に、
交通事故など損害賠償請求訴訟などでよく出てくる言葉なので、
覚えておいてもよいかもしれません。 |