弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第485回
弁護士によって答えが違う?

みなさん、「行列のできる法律相談所」という番組で、
同じ事案なのに、答えが弁護士によって違うことがある
ということを知ったという方も多いと思います。

あの番組では、各弁護士が、事実をどう考えるか、
あるいは、法律をどう解釈するかということで、
結論が変わって来るということを取り上げています。

今回取り上げるのは、法律上は、
どの弁護士から見ても結論は変わらないけれども、
アドバイスが異なるというケースです。

具体例を挙げると、

Q お金を借りている金融機関から、
税務申告書を見せるように言われているけれども、
見せなければいけないか?

という相談があったとします。

典型的な回答は、

A 法律上、税務申告書を見せる義務はないから、見せる必要はない。

となります。
法律上、金融機関に対し、
税務申告書を見せなければならない義務はありません。
これは、どの弁護士でも知っています。

しかし、借主が金融機関に返済を待って欲しいとお願いしている
という状況にあった場合、
法律上、義務がないからと言って、
税務申告書を見せなかったら、どうでしょうか?

もちろん、金融機関は、税務申告書を見せなければ、
返済を待ってはくれないでしょう。

金融機関は、返済を待つかどうか判断する上で、
借主の収支の状況や隠し財産、
隠し借金などがないかどうかを確認するために、
税務申告書を見せるよう要求しているからです。

したがって、法律上義務がないからといって、
応じなくてもよいとは限らないケースもあるわけです。

だから、先ほどの相談に対しては、
法律上義務がないけれども、
金融機関に対し返済を待ってもらうなどの事情があれば
見せた方がよいという回答になります。

ただ、この具体的事情については、
面談で聞かないことにはわかりません。
相談者の説明の仕方や
弁護士の事情の聞き方でも変わってきます。

そこで、法律上の結論は変わらないのに、
最終的なアドバイスの内容は、
弁護士によって違ってしまうことがあるのです。

相談のケースとは逆に、
事情によっては、義務があっても、
その義務を履行する必要がないとアドバイスすることもあります。


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2009年9月1日(火)

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