.

弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第387回
信用することのリスク

恋人や友達などに、
お金を貸したときなどに、
いちいち領収書や借用書をもらう人は、
あまりいないかもしれません。

親しい関係にあるのに、
借用書を書いてくれというのは、
相手を信用していないように思われるから、
なかなか言いにくいということだと思います。

「信用したから借用書なんかなくても貸した」というのは、
親しい人にお金を貸したけれども、
返してもらえなかった人が、よくいうセリフです。

いちいち、借用書など気にしないで、
相手は返してくれると信用してお金に困っている人に
お金を貸すことは、人間的には、よいことだと思います。

しかし、いざ、裁判になると、
「相手を信用したから、借用書なしでお金を貸した」
ということは、全くプラスの材料にはなりません。

むしろ、相手が借りていないという主張をした場合には、
貸した証拠がないのですから、マイナスに作用します。

その結果、お金に困っている人を信用して
借用書もなしにお金を貸した人が、
借りたのに借りてないと嘘をついている人に
裁判に負けてしまうこともあるのです。
こんな裁判はおかしいと思われる方が多数だと思います。

しかし、裁判官が、証拠もなく、
お金を貸したことを認めるようになったらどうでしょうか?

逆に、お金を貸してもいないのに貸したと主張する人が出てきて、
裁判に勝つということにもなりかねません。

みなさんは、人が嘘をついているかどうかは
わかるはずと思っているかもしれません。

しかし、実際は、どちらが嘘をついているかなんて
わからないものです。
だって、人が嘘をつくのがわかるくらいなら、
お金を貸すときに相手が「絶対返す」と言っているのが
嘘だってわかるはずじゃないですか。
だから、裁判では、
客観的な証拠がある方が勝つことになっています。

人を信用して借用書をもらわないのはいいのですが、
信用するということは、
裁判で負けるリスクを負うということですので、
その点を頭に入れておいてください。


←前回記事へ

2008年9月4日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ