第369回
どちらを選んでも不利な選択
みなさん、「選択」と言うと、
片方が良くて、片方が悪い、
あるいは、両方自分にメリットがあるけれども、
どちらがメリットが大きいかという
自分に良いものを選ぶというイメージがあるかもしれません。
しかし、人生そう自分に良いものを選択すれば
良い場面だけではありません。
どちらを選んでも
自分に不利な選択肢を選択しなければならない場面もあります。
裁判においては、
自分が正しいと主張し、
争っているにもかかわらず、
それが認められない可能性もあり、
どちらを選んでも不利な選択を迫られるということが、あります。
具体的には、相手方が、
契約に基づき1000万円を請求しているとしましょう。
こちらは、契約は無効だという主張をして争っています。
お互い主張、立証をした段階で、和解となりました。
ここで、裁判官から、
「お互いの言い分を聞いて、
こちらの言い分も分かるけれども、
判決となれば、相手方が有利だろう。
相手方は600万円ならば手を打つと言っているので、
それで和解しないか」
というような提案をされる場合があります。
こちらは、契約は無効で
支払い義務はないと信じて、争ってきたのに、
こちらからすると嘘つきの憎い相手に
600万円も支払わなければならないのです。
しかし、ここで、
和解を蹴って判決を取ることにすれば、
判決で1000万円の支払を命じられて、
1000万円を支払わなければならないことになる可能性もあるのです。
こういう事案では、
本当につらく厳しい選択ですが、
和解をして支払う道を選ぶか、
敗訴の可能性が高くても
わずかの勝訴の可能性に賭けるかを選択しなければなりません。
事案によりますが、
一般的に、弁護士としては、
裁判官が相手が有利と言ったことから負けたときの
より厳しい結果を考えると、
和解する方を勧める方が多いと思います。
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