弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第368回
死亡直前の養子縁組

以前、亡くなりそうな方の財産を取ってしまおうとして、
死亡直前に土地建物の名義を
変えてしまうということがあるというお話をしました。

これと似た手法で、
自分が相続人になろうとして、
あるいは自分の妻子を相続人にするために、
亡くなった方と死亡直前に
養子縁組がなされているケースがあります。

具体的にお話しすると、

病気で入院中のAさんには、
BCという子供が2人いました。

Aさんが亡くなれば、
Aさんの財産は、
BとCに2分の1ずつ相続されることになります。

ところが、Aさんが亡くなってみると、
長男であるBさんの子のDと
養子縁組していたというような場合です。

この養子縁組により、
Aさんの子は、3人になりますから、
Aさんの遺産は、
BCDに3分の1ずつ相続されることとなります。

BDは、親子ですから、
本来、BとCが2分の1ずつ相続するものが、
養子縁組によって、
実質的に長男Bが3分の2、
Cが3分の1になるわけです。

Cとしては、相続分が2分の1から3分の1になってしまうので、
この養子縁組が無効と言いたいところです。

具体的に、このような養子縁組が無効かどうかは、
養子縁組の時期のAさんの病状、
養子縁組届の筆跡及び印鑑、
養子縁組の経緯などによって、決まります。

まず、Aさんが養子縁組をしたころの病状が痴呆で、
自分で物事を考えたり、
日常会話をしたりするのは難しかったということになれば、
養子縁組は無効となる可能性は高いです。 

次に、Aさんが自分で署名していない場合には、
Aさんが知らないうちに養子縁組届けが出されたかもしれません。

本件では、2人の子供がいるのに、
さらに長男の子を縁組しているので、
養子縁組の必要性がないように思えますから、
ますます養子縁組がAさんの意思でなされたかは怪しいです。

このように、自分が相続人になったり、
自分の相続分を増やそうとしたりするために、
養子縁組が使われることもあるのです。





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2008年6月24日(火)

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