弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第310回
内部告発の行方

今、世間を騒がせている食品偽装問題などは
内部告発がきっかけとなっています。
企業の行なっている不正を告発することにより、
不正が正されることとなり、
不正を行なった企業及び企業経営者は、
刑事責任、民事責任などの法的責任を負うこととなることから、
内部告発は社会の不正を正すために重要です。

そのため、内部告発は、
公益通報者保護法により、保護されることとなります。
具体的には、内部告発をした従業員に対し、
解雇や降格、減給などの
不利益な取り扱いをしてはいけないこととなっています。
しかし、不正なことをしていたことが明らかとなれば、
消費者や取引先などは商品を購入してくれなくなります。
また、会社に不正取引が蔓延しているような場合、
不正を正したら、
価格競争力などがなくなってしまう可能性があります。
取引先から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

これらを考えると、財産を持ち、
資力があるような大会社であれば、
内部告発に耐え、再起を図ることもできますが、
あまり資力のない会社では、倒産してしまう可能性があります。
実際、ミートホープ社は、
内部告発で食品偽装が明るみに出た後に破産を申請しています。
そうなると、内部告発をしようとする人は、
内部告発すると、
自分の会社が倒産してしまうかもしれない
ということを考えなければならなくなってしまいます。
もちろん、不正により利益を上げている会社は、
正規の取引で利益を上げられないのであれば、
市場から退場する必要があります。
しかし、それによって、会社が倒産してしまうと、
多数の従業員が職場を失うということにもなりかねないのです。

こういう悲劇が起こらないためには、
不正が小さいうちに、社内の自浄作用により正し、
それができないならば
内部告発で正すというように、
不正が会社の経営の影響を与えないほど小さいうちに
正すことが必要です。





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2007年11月27日(火)

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