弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第265回
年金問題先送りした者勝ち

年保険料払込不明問題で、
コンピューターの入力が問題がないかどうか確認せずに、
年金の台帳の廃棄を命じた以降の
社会保険庁長官経験者が
1人1億円以上の退職金をもらっている
というニュースを聞いて、
みなさんびっくりしたと同時に、
憤りを感じたことと思います。

首相や大臣が歴代長官の責任を調査したり、
退職金の返還を求めたりすることを検討しているようです。 
しかし、法的責任という観点からすると、
責任追及や退職金の返還を求める
ということは、なかなか難しいです。
もともと、法律上、責任を問えるかは、
そのときの法律やルールがどうなっていたか、
そのときに台帳を廃棄したら問題が起こるとわかったか
という難しい問題があります。

そのことを差し置いても、
時効は、最長20年です。
20年経過してしまうと、
法律上責任は問えなくなってしまうのです。
法律構成によれば、時効が10年という場合もあります。

とすると、1985年の時点で台帳の廃棄を命じたことが、
違法だとしても、現在は、
2007年で、20年以上経過しているので、
普通に考えれば、責任を問えなくなるのです。
台帳がなくなったから、
年金保険料の払込の有無の確認ができなくなったのだから、
台帳の廃棄を命じたときの長官及び役員、
管理職の責任が一番重いと思われますが、
これが時効で責任を問えなくなると、
かなり不公平なこととなります。

しかし、バブル崩壊後の破綻企業の役員の責任でも、
不良債権を作ったときの役員
あるいは隠すことを決めた役員は責任を追及されず、
その後、その不良債権を隠し続けた役員が
責任を追及されるという不公平な結果となりました。
なかなか法律の規制をかけるのが難しいところなので、
今でも、問題先送りをして
逃げるが勝ちという状態になっています。





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2007年6月14日(木)

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