第242回
生前の相続争い
相続争いと言うと、
財産を持っている方が
亡くなった後のことと思っている方が多いと思います。
もちろん、相続争いは、
財産を残して亡くなった方の
遺産の分け方を巡る争いの方が圧倒的に多いです。
しかし、財産を持っている方が亡くなる前から、
遺産を巡る争いが起きている家族も結構あるのです。
例えば、長年両親と疎遠だった長男夫婦が、
お父さんが亡くなってお母さん1人になった途端、
急にお母さんと同居して、
お母さんの面倒を見ると言い出したりするケース。
表面的には、お母さんが1人になってしまったことをきっかけに、
長男がこれまで疎遠だった罪滅ぼしの分も含めて
お母さんの面倒を見たいという美談かもしれません。
しかし、弁護士のところに相談に来るくらいの事案ですから、
そのような美談ではなく、
長男夫婦が両親に遺言を書いてもらうためだったり、
後で遺産分割のときに、
自分が母親の面倒を見たことを理由として
相続分を多く主張するためだったりします。
高齢者は、1人になると心細いものです。
だから、身近にいる人によくしてもらおうとして、
財産をあげると約束してしまうケースが多いです。
逆に、身近にいる人に、
「財産が欲しい。」あるいは
「遺言書を書いて欲しい。」と言われると、
その人が自分から離れていってしまうことを恐れて、
財産を贈与してしまったり、
遺言を書いてしまったりします。
そういうことを狙ってだと思うのですが、
1人暮らしの高齢者の元に、
急に、同居して
面倒を見ると言い出す人たちがやってきます。
それは、長男夫婦とは限りません。
お母さんの兄弟だったり、子供だったり、
ときには家政婦だったりします。
お金のある高齢者の場合、
誰がその人の面倒を見るかで
争いになることも多いです。
このように生前から
相続争いが始まっているケースもあるのです。
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