弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第189回
売ったお金で返済できるはずが・・・

相続が発生したときに、
プラスの遺産だけであれば、
相続してもらうだけなので、
余り悩む必要はありません。
しかし、借金などの
マイナスの資産があったときには、
そのまま相続するのか、
相続を放棄してしまうのか悩むところです。

Aさんは、親が借金を残して亡くなりました。
土地と建物もあったので、
これを売って
返済すればよいと考えていました。
しかし、その土地は、
建築基準法上の規制により、
建物が建たない土地でした。
即ち、誰も買う人がいない
土地だったのです。
ということは、
土地を売って
借金を返すことなんてできません。
土地を売却して
借金を返済しようとしていたので、
相続放棄をしていませんでした。

結局、Aさんは
丸々借金を相続することと
なってしまうわけです。
こういう悲劇が
起こらないとは限りません。
ここまで極端でなくても、
遺産の不動産が
もっと高く売れると思ったのに、
安くしか売れずに
借金が残ってしまうということは
十分に考えられます。

こういうときは
どうしたらよいでしょうか?
少し相続に関する
知識のある方は、
限定承認をすれば
よいと思う方もいるでしょう。

しかし、限定承認には
問題点もあるので
(これについては次回ご説明します)、
まず、相続するのか、
相続放棄するのか、
限定承認するのか、
考える期間の延長の
申立をすることをお勧めします。

通常、相続の放棄あるいは
限定承認をするのは、
3ヶ月以内と決まっています。
その期間内に放棄も
限定承認もしなければ、
相続をしたこととなってしまいます。
この3ヶ月以内に、
相続の放棄をするか、
限定承認するかを決められないときは、
家庭裁判所に申立をして、
期間を延長することができるのです。
これを「熟慮期間の伸長」と言います。

この延長した期間の間に、
不動産がいくらで売却できるのかを
不動産業者に調べてもらって、
放棄するのか、
限定承認するのか、
相続するのかを決めればよいのです。


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2006年9月12日(火)

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