弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第109回
上場はよい事ばかりではない

前回、上場のメリットを説明しましたが、
上場は、よいことばかりではありません。

法律上、株式会社では、
株主が最終的な意思決定権を持っています。
上場するということは、市場で株を買えば、
誰でも株主になることができるということです。

そこで、非上場であれば、
経営者が全部自分で好きなように
経営を行なえたのに、
上場した途端、
自分の考えに反対する株主が出てきたり、
いわゆる総会屋など反社会的な人物が株主だから、
経営について意見を聞いてほしいなどと
言ってきたりします。

そこで、株主対策や株主総会対策などのための
従業員や弁護士を雇わなければならないし、
経営者もそのために時間や労力を使うこととなります。

もちろん、決算内容を公開するために、
監査法人の監査を受けなければならないし、
経営上の重要な事項は
全て公開しなければなりません。
上場している証券取引所に、
一定の費用も支払わなければなりません。

というように、非上場でいれば、
不必要な労力や費用が発生します。

その上、最初に話したニッポン放送やTBSのように、
上場していれば、
誰でもその株を自由に買うことができるので、
常に、企業買収に遭う可能性があるのです。

株主から、株主の利益を損なったとして
株主代表訴訟により
損害賠償を請求されるおそれもあります。

会社が新しく、知名度を上げたり、
増資して資金調達したりする必要性があれば、
上場している意味はあります。
しかし、日本の上場企業には、
既に社会的な知名度もあり、
証券市場で新たに資金調達をする必要性も
少ないものが多いように思われます。

とすれば、わざわざ費用や労力をかけて、
上場を維持することをやめるという企業が
出てきてもおかしくはありません。

アパレルのワールドは、
こういう観点から上場廃止を選択したようです。
まあ、これはこれで問題もあるのですが・・・。


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2005年11月15日(火)

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