弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第17回
最高裁はどちらを勝たせたか?

大手不動産業者がサブリース契約において、
家賃保証をしておきながら、
賃料減額することができるか
という質問に対する回答の続きです

サブリース契約の家賃保証にもかかわらず
賃料減額ができるかという問題を巡る裁判は
多数起こされました。

この問題は、難しい問題で、
不動産業者の言い分を認めて
賃料の減額を認めたもの、
大家の言い分を認めて賃料の減額を認めないものと
裁判所の判断も分かれました。
そこで、最終的に、最高裁判所の判断が、
平成15年10月21日になされました。

結論は、大手不動産業者が借主であるサブリース契約にも、
借地借家法32条の賃料減額規定の適用があるというものです。
借地借家法32条は、
当事者の合意によっては覆すことができない
強行法規であることが理由です。
法律には、当事者が法律に反する合意のできる任意規定と、
法律に反する合意をしても無効な強行規定があります。
借地借家法32条は強行法規だから、
家賃保証しても無効だとするのが、
最高裁の判断なのです。

僕個人としては、
経済的弱者を守る法律により、
経済的強者が救済されるのはおかしいので、
逆の結論もあったのではないかと思います。

ただ、最高裁も、
無条件に不動産業者の言い分により
賃料の減額を認めたわけではありません。
保証した家賃の額と周辺相場の差がどれくらいあるか、
大家の支払う銀行借入の返済額と
家賃の額の差などの事情を考慮して、
賃料減額を認めるか、
賃料減額を認めるとしていくらまで減額するかを
決めるべきだとしています。

最高裁は自分で最終結論を出さずに、
高等裁判所に差し戻したので、
賃料の減額が認められるか、
認められるとしていくらまで減額が認められるかについては、
最終的な結論が出ていません。
家賃の周辺相場が、
ローンの支払額を上回るのであれば、
周辺相場近くまで減額されることが予想されます。

しかし、家賃の周辺相場が
ローンの支払額を下回った場合に、
裁判所が、ローンの支払額までは、
不動産会社が保証しろというのか、
それとも、そこまで家賃が下がった場合には
大家にも一定のリスクを負えと判断するのか、
今後の判決が注目されます。

質問の回答ですが、
不動産業者の言うように
賃料減額の余地はあるけれども、
その減額の額は、
ローンや固定資産税等の支払いや契約の経緯、
賃料が下げられると
どんな不都合が出るかなどの事情を総合判断して、
賃料の額が決められるので、一概には言えませんが、
必ずしも不動産業者の主張する減額請求に応じる必要は
ないと思われます。

現在の賃料や周辺相場、
ローンの支払額等具体的な資料を持って
具体的な相談をしていただければ、
もう少し具体的に回答できますが、
最終的には裁判をやってみないと
わからないということとなります。


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2004年12月7日(火)

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