弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第13回
遺留分の請求権は時効でなくなるか?

■質問
 
遺言により
遺留分が侵害されていることを知った1年以内に、
内容証明郵便で、相手方に遺留分減殺請求をしました。
その後放置したまま、2年以上経過してしまいました。
遺留分減殺請求権の時効は1年だと聞いています。

貸金の場合には、請求した後
6ヶ月以内に裁判を起こさないと
時効中断ができないそうですが、
本件の場合もこの考えが適用されてしまうのでしょうか?

■回答
 
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分といって、
最低限保証される相続分があるということは、
前回お話しました。

さて、その遺留分の権利行使は
いつまでにすればよいのかというのが、今日の問題です。
遺留分減殺請求権は、知ってから1年
又は相続開始のときから10年で時効にかかってしまいます。
故人が亡くなって、お通夜、初七日、四十九日、
初盆、お彼岸、一周忌と、
あっという間に1年は経ってしまいます。
だから、遺言があって、遺産が全くもらえず、
あるいは、他の兄弟に比べてほとんどもらえず
不満があるという場合には、
すぐに弁護士に相談した方がよいのです。

質問のように、
1年以内に内容証明郵便で遺留分減殺請求をして、
その後放置してしまった場合はどうなるでしょうか?
内容証明郵便の効果については、
ずっと前に創業大学の
「大学では教えない、でも役に立つやさしい法律講座」
29回
で、お話したとおり、
6ヶ月以内に裁判を起こさないと
時効を止めることはできないのです。
遺留分減殺請求権にもこの理屈が当てはまると、
せっかく内容証明郵便で
遺留分減殺請求権を行使したにもかかわらず、
時効にかかってしまうということになります。

しかし、安心してください。
最高裁の判例で、遺留分減殺請求権は、
裁判によらなくても、相手方に対し、
1度権利行使しておけば、遺留分減殺の効果が発生し、
その後は遺留分減殺請求権の時効には
かからないとされています。
だから、あなたの遺留分減殺請求権は
時効にかかっていませんから、
これからでも、遺留分減殺請求に基づいて、
自分の遺留分について、
遺産の引渡や名義変更を求めることができます。

遺留分減殺請求権行使後10年放置すると、
別な点でまた時効の問題が生じたり、
遺産を相続した人が散財してしまうなどの
問題が生じたりしますので、
早めに遺留分の問題を解決した方がよいと考えます。


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2004年11月23日(火)

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