第89回
訴訟は和解で解決することが多い理由
民事裁判(民事訴訟)は、裁判所に、
判決で、どちらの言い分が正しいか判断してもらうために、
起こされるのが普通です。
しかし、実際は、裁判の3分の1から半分くらいは、
和解で解決しています。
和解は、話し合いで、
お互いが納得した内容で合意することです。
裁判が和解で解決することが多い理由は、
よく言われるように、
日本人が争いを好まないということもあるかもしれません。
しかし、和解の方が判決による解決よりも
メリットがあるから、
和解による解決を選択しているケースが多いと思います。
では、どういうメリットがあるのでしょうか?
(1)結果の確実性(敗訴リスクの回避)
裁判では、お互いが自分の有利な主張をし、
それを立証し、勝訴判決を得ようとします。
訴訟の終了時点でお互いの主張立証などが
五分五分や僅かな差しかないような場合で、
どちらが勝ってもおかしくないケースがあります。
一審や二審、最高裁で結論が変わるケースが
その典型例でしょう。
その場合、判決では、勝つか負けるか、
100かゼロかになってしまうことが多いのです。
お互いの証拠からは、
どちらに転んでもおかしくないのに、
ゼロになってしまう可能性があるのです。
原告が被告に1000万円の
損害賠償請求していたケースで説明すれば、
判決になれば、原告が勝てば
1000万円請求できることとなるかもしれませんが、
負ければ全く請求権がないということになります。
被告からしても、勝てば全く支払わないで済みますが、
負ければ1000万円全額支払わなければならないのです。
そこで、主張や証拠の優劣がなければ、五分五分として、
原告は500万円で我慢し、
被告も500万円は支払うことで和解する
ということになるのです。
これで、原告は1000万円全額は取れなかったけれども、
確実に500万円を受け取れることとなり
ゼロになるリスクは避けられたわけです。
被告からしても、
全く支払わないわけにはいかなかったけれども、
1000万円全額支払わずには済んだわけです。
このように、原告被告双方が、
判決を求めて不確実だけれども
自分に有利な結果を取るよりも、
少し自分に不利だけれども
確実にメリットのある結果を取ることを選択すると
和解で解決します。
この場合の譲歩する割合は、
訴訟の見込みを踏まえて、
お互いが納得するところであり、
常に5:5とは限らず、7:3の場合もあれば、
9:1の場合もあります。
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