第76回
立証責任はどちらが負うのか?
前回、裁判の審理(主張と証拠調べ)が終了した段階で、
ある事実を証明できなかった場合
敗訴してしまうことを
立証責任と言うことをお話しました。
さて、この立証責任は、
どういう場合にどちらが負うのでしょうか?
基本的な考え方は、
「ある」と主張している方が立証責任を負います。
前回の「株が必ず上がる」
と騙されて買わされたことを理由に
損害賠償請求するというケースでは、
請求する原告にセールスマンが
「株が必ず上がる」と説明したことを
立証する責任があるのです。
お金を返せというケースでは、
請求する側が、
いつ、いくら、貸したということについて
立証責任を負います。
これに対し、請求された被告が
「借りていない」と反論する場合は、
「借りていない」ことについて立証責任を負いません。
しかし、被告が「返した」と主張する場合には、
いつ、いくら、返したということを
立証しなければなりません。
貸主が、「返してもらっていない」ことについて
立証責任を負うわけではないのです。
被告が原告から「返さなくてよい」と言われたから
返す必要は無いと反論する場合はどうでしょうか?
みなさん、もうお分かりですね。
「返した」と同じように、
被告が原告から「返さなくてよい」と言われたことに
立証責任を負います。
以上の立証責任ということを考えると、
お金を貸す側は、
借用証のようなお金を
貸したという証拠を残しておく必要があり、
他方、お金を借りた側は、
領収書や振込控えなど
お金を返した証拠を
残しておく必要があるということになります。
貸主から「返さなくていいよ」と言われた場合、
「やった。返さなくて済んだ。」
と喜んでばかりもいられません。
後で、気が変わって返せと言われた場合、
「返さなくていいよ」と言われたことを
証明しなければなりません。
「返す必要がない」旨の一筆をもらえれば
もらっておいた方がいいですし、
少なくとも借用証を返してもらっておくくらいは
する必要があります。
これは、ビジネスにおいて、
「ここは工事しなくてよい」
「この商品はいらない」
「代金は2割減額でよい」
「これはサービスです」
などと言われたときでも同じです。
そう言われたと主張する方に、
立証責任がありますので、
書面でもらうなど
証拠を残しておくことが必要となります。
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