第75回
当事者のどちらも証明できない場合は(立証責任)
先週は、体調を崩して、
連載を休ませていただきました。
日経キャリアマガジンや
ビジネス弁護士大全2005を本屋で
読んでいただいた方はいらっしゃるでしょうか?
読んでいただいた方がいらっしゃったら
感想をお寄せいただければ幸いです。
さて、今週の話です。
裁判での立証について、お話して来ましたが、
ある事実について、
当事者(原告・被告)のどちらも立証できない場合
どうなるかという話をしたいと思います。
裁判になっても、証拠が無ければ、
「言った。」「言わない。」となり、
お互いが証明できないので、
どちらにも有利にならないし、
不利にならないということを言う人がいます。
しかし、それは、誤りです。
裁判では、ある事実が証明できない場合、
どちらかが不利になります。
この会社の株は絶対上がるからと言って、
証券会社のセールスマンが
株を買うことを勧めたことを理由に、
株の購入代金の損害賠償請求を求めるケースで説明します。
損害賠償請求を求める原告は、
「セールスマンがこの会社の株は絶対上がると説明した」
と主張します。
これに対し、被告である証券会社は、
「セールスマンはこの会社の業績が好いことを説明しただけだ」
と反論します。
セールスマンの説明内容について、
「言った。」「言わない。」が
裁判の争点となっています。
裁判で、証拠調べを行なった結果、
原告の主張である
「セールスマンがこの会社の株は絶対上がると説明した」ことも、
被告の主張である
「セールスマンはこの会社の業績が好いことを説明しただけだ」
ということも、本当かどうかわからない、
即ち証明できなかったとします。
この場合どうなるかと言うと、
損害賠償を求めている原告の請求が認められない、
即ち原告が敗訴することとなります。
このケースでは、
損害賠償請求を求める原告が
「セールスマンがこの会社の株は絶対に上がると説明した」ことを
証明しなければならないからです。
これに対し、被告である証券会社は、
「セールスマンがこの会社の株は絶対に上がると説明した」ことを
否定すればよく、
「この会社が業績がよいと説明しただけ」であることまで
証明する必要はないのです。
その事実を立証できないと敗訴してしまうことを
「立証責任」と言います。
立証責任がどちらにあるかで、
訴訟の行方は変わってきます。
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