弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第77回
大相続時代の遺言

先日放送していた
「ガイアの夜明け」(テレビ東京)
というテレビ番組によれば、
日本人の個人資産の合計は2600兆円で、
このうち約半分を65歳以上の高齢者層が
持っているそうです。
この1000兆円以上の資産が、この先20年で、
相続により、次の世代へと引き継がれていく
という大相続時代がやってくるそうです。

実際にそれだけの額が
あるのかどうかはわかりませんが、
高齢化社会と言われるだけあって、
高齢者の財産管理や
財産承継・遺言の相談は増えています。

遺言を考えるということは、
自分の死んだ後のことを考えることですから、
普通の人はあまり考えたくありません。
しかし、遺言を残しておかないと、
これまで円満にしていた家族がいがみ合ったり、
あなたと縁の薄かった人が
あなたの財産を引き継ぎ、
あなたのために尽力してくれた人は
何も得られなかったりする
ということになりかねません。

弁護士からすれば、
財産のある人は全て遺言を書いた方がよいのですが、
次の場合は、遺言を書かないと
思わぬことになってしまうので、
是非遺言を書いてください。

1.子供、配偶者、兄弟等相続人がいない場合

  相続人がいない場合には、
  財産は全て国のものとなってしまいます。
  国以外に自分の財産を
  引き継いで欲しいという人がいる場合には、
  遺言を書く必要があります。

  相続人がいないとき、
  亡くなる直前まで面倒を見ていた人がいれば
  特別縁故者として
  財産が与えられることとなります(民法958条の3)が、
  家庭裁判所へ申立をして、
  証拠を提出することが必要ですし、
  一定期間(最短で9ヶ月)を経過してしまうと
  特別縁故者の請求ができなくなってしまいます。

  逆に、あなたが思わぬ人が特別縁故者の申請をして、
  あなたの財産を承継することになることも考えられます。

2.配偶者(妻又は夫)がいて、子供がいない場合

  配偶者(妻又は夫)は、常に相続権を持ちます。
  子供がいない場合、両親に相続権がありますが、
  両親も亡くなっている場合には、
  兄弟に相続権が発生します。

  そこで、通常、子供がいないと
  妻と兄弟が相続することとなってしまいます。
  その相続の割合は、4分の3と4分の1となります。

  兄弟に世話になっているので、
  財産の4分の1くらいは兄弟に与えてもよい
  というのであれば、遺言は必要ありません。
  しかし、遺言がなければ
  折り合いが悪い兄弟でも相続権を持ちますし、
  兄弟に相続分を渡すために、
  奥さんが自宅を売却しなければならない事態に
  追い込まれることも考えられます。

  こういうケースでは、妻に全財産を相続させる
  という遺言を書いておきましょう。

遺言を書いた方がよいケースは、次回に続きます。


←前回記事へ 2004年6月1日(火) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ