弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第31回
相続で訴えられたとき

相続での揉め事も増えています。
相続の場合は相続で訴えられると言っても、
民事裁判ではなく、
遺産分割調停を起こされるケースがほとんどです。

遺産をどのように分けるのかは、
法律上、通常の裁判ではなく、
相続人同士で話し合いを行う手続きである
調停をすることとなっているからです。

調停で解決がつかなければ、
審判という裁判手続で
裁判所が遺産の分け方を決めることとなります。

相続・遺産分割の場合は、
最初は裁判所で話し合い、
話し合いで解決がつかない場合に
裁判所が分け方を決めるという
おおよその流れを知ってもらえば十分です。

相続・遺産分割で揉める原因の1つに、
亡くなった故人の身の回りの世話をしていたとか
事業を手伝っていたのだから
遺産を多く欲しいという主張があります。

この主張自体は寄与分と言って
法律上も認められます。
しかし、この寄与分が
一体いくらくらいが妥当なのかを決めることは
ケース・バイ・ケースで難しいです。

もう1つの原因に、
故人が生きていたときに、
相続人のある者が事業資金をもらったとか、
家を建てる費用を出してもらったのだから、
相続のときにはその分を減らすべきだという主張があります。
この主張は、法律上特別受益と言って、
特別受益があった場合には
相続財産に含まれていると仮定して
相続分を計算し遺産分割をすることを認めています。

ただ、この特別受益については、
古かったり、証拠がなかったりして、
争いの種になりやすいのです。

その他、配偶者が後妻だったり、
長男が遺産の全部を取ろうとしたり、
それまでの親子・兄弟の感情のもつれが表面化して、
前述した寄与分や特別受益が絡んで、
相続・遺産分割は複雑になり、
揉め事が大きくなって
遺産分割調停を申立てられるということになるのが普通です。

遺産分割は、配偶者が2分の1、
子供が残り2分の1を均等に分けるのが基本で、
それに寄与分や特別受益を考慮して分け方が決まると考えて、
話し合えば、解決策は見つかるはずです。
詳しいことは、僕の著作
「相続・遺産分割する前に読む本」(税務経理協会)などを
参考にしてください。

今の時代、長男だから
全部自分が相続するのが当然という考え方では、
遺産分割調停を申し立てられるということになってしまいます。

ただ、法律どおりに分けると、
事業承継や会社の経営が危うくなる場合があります。
だから、事業や会社を営んでいる人は、
たとえ今元気であっても、
事故が起きる可能性はあるのですから、
事業承継を考えた遺言書を書くことをお勧めします。

事業や会社を営んでいない方でも、
遺言書を書くことをお勧めします。
遺産が自宅くらいしかなくても、
それを巡って、誰が自宅を取るのか、売って分けるのか、
残された配偶者を誰が面倒を見るのかなど
争いが起きているのが現実だからです。

遺言書は何度も書き直すことができ、
一番新しい遺言書が最終的な効力を持つこととなります。


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