第24回
弁護士費用を負けた方が負担した方がよいか?
ここ2回ほど、
現時点の法律では、原則として
弁護士費用は訴訟で負けても
相手方の分までは負担する必要がない
という話をしてきました。
「現時点」という点に気づかれた方も多いと思います。
どうして、敢えて「現時点」と書いたかというと、
今、司法改革で弁護士費用は
敗訴者負担にすべきだという議論がなされているからです。
敗訴者負担にすべきという意見の根拠は、
訴訟で勝った方、即ち法的に正しいと認められた方が、
弁護士費用を負担しなければならないのでは、
正しい請求をしたとしても、
あるいは相手の不当な請求を排斥したとしても、
弁護士費用分損してしまうので、
権利の実現、あるいは正義の実現にはならないということです。
これに対して、敗訴者負担に反対の意見は、
実際の訴訟では、訴訟を起こすときには
勝つか負けるかわからないのだから、
訴訟を起こす人は、
自分の弁護士費用を払って
訴訟を依頼することさえためらうのが実情なのに、
敗訴したら相手方の費用まで
負担するリスクがあるのであれば、
かえって、訴訟を利用することを
ためらってしまうというものです。
どちらの主張ももっともで、
どちらが正しいかは難しい問題です。
ただ、僕の経験からして、
実際に弁護士費用が敗訴者負担になった場合には、
過去の判例のない裁判や難しい裁判は
起こす人がかなり少なくなることが予想されます。
するとこれまで生まれてきた
画期的な判決が生まれる可能性は少なくなるでしょう。
それと同様の意味で、
敗訴した場合に
弁護士費用の負担リスクを負うことのできるお金持ちや
企業の方が有利になると考えられます。
そういうことを考慮すると、
自分の弁護士費用は
自分の権利を守るために負担する費用と考えて、
自己負担を原則とするのがよいと思います。
ただ、世の中無用な争いをする人も多いことから
それを防ぐために
裁判所から判断して、
請求権があることが明らかなのに
争って負けた場合、
請求権がないことが明らかなのに
訴訟を起こして負けた場合は、
弁護士費用を敗訴した方に
負担させることがよいのではないかと、
僕は考えています。
前回、例外的に敗訴者が負担する場合を挙げましたが、
これが認められるのは、例外中の例外ですから、
この要件をもう少し広げたくらいがよいということです。
実際の裁判でその線引きをするのはかなり難しいので
僕の案が採用されることはないでしょう。
みなさんはどう考えますか?
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