第23回
弁護士費用を負けた方が負担するとき
前回、現時点では、訴訟で負けても、
相手方の弁護士費用までは
支払う必要はないという話をしました。
しかし、例外的に敗訴した方が
相手方の弁護士費用を支払う必要がある場合があります。
大きく分けると2つのケースです。
1つ目は、相手方の訴訟の仕方が
あまりにもひどいケースです。
例えば、契約書や当時相手方の作成した文書など
客観的な証拠から、
相手方の請求がないことが明確であるにもかかわらず、
請求権があると訴訟を起こしてきたケースがこれに当たります。
これらは、不当訴訟と言います。
みなさんは、憲法で
「裁判を受ける権利」を保障されていますので、
ある程度根拠が薄くても
訴訟を起こすことは許されます。
だから、一般の人が不当だと思っても、
法律上の不当訴訟には該当しません。
請求権がないことが客観的な証拠から明らかで、
それを相手が十分知っていながら、
訴訟を起こしてきたと言えるような場合です。
このようなケースでは、
訴えられた方は、いわば被害者ですから、
弁護士費用分を損害として賠償請求できるのです。
こういう請求は
よほどひどいケースでないと認められませんから
滅多にありませんが、
僕は、弁護士生活10年間で2件ほど認められました。
それから、もう1つ目は、
事故などの損害賠償請求のケースです。
事故に巻き込まれれば、
被害者は弁護士を依頼して損害を賠償請求することは
普通のことで、
弁護士費用まで賠償されなければ
被害が回復されないという考え方に基づいています。
これらの2つの類型の場合、
例外的に訴訟で勝てば
弁護士費用を負けた方に支払ってもらえることになります。
ただ、弁護士費用分を損害だとして、
請求を立てる必要があります。
黙っていても訴訟で勝てば
もらえるというものではありません。
それから、弁護士費用分を
敗訴した相手方から取れると言っても、
全額ではありません。
請求額の1割と言うのが多くの判例です。
交通事故で1億円の賠償請求が認められた場合には、
弁護士費用相当額として
1000万円が認められると言うことです。
1億円の請求の訴訟では、
弁護士報酬規程によれば着手金368万円、
報酬金736万円の合計1104万円が弁護士費用ですから、
1000万円を相手方に負担させることができても
104万円は自己負担ということになります。
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