第203回
供託は、裁判で白黒付くまでお金を預かる制度ではありません。

先週の宿題は、
売買代金で、2500万円か
2000万円かで争いがある場合、
買主は裁判で決着するまで、
代金2500万円を供託しておくことができる。
○でしょうか?×でしょうか? 

というものでした。
ちょっと難しかったでしょうか?
答えは×です。

供託という制度は、
みなさんには、あまり馴染みがない制度かもしれません。
でも、今回の宿題のようなケースで、
賃料や代金の金額について
トラブルになってしまった相談者からは、
よく「供託しておけませんか」という質問を受けます。
これは、裁判中供託しておけば、
相手が受け取ることができずに
困るのではないかという意図の質問です。

供託は、どういう場合にできるかと言いますと、
(1)相手方が支払いを受け取らないケース
(2)誰に支払ってよいかわからないケース
です。

(1)のケースは、こちらが支払うと言っているのに、
相手がどうしても受け取らないという場合に、
供託することによって、法律上支払ったことにするのです。

(2)のケースは、1つの債権が同じ日に
別な人に二重に譲渡されたような場合には、
支払う方はどちらに支払ったらよいかわからないので、
供託することによって、法律上支払ったことにして、
トラブルに巻き込まれないようにするわけです。

要するに、供託は、供託したことによって
相手に適法に支払ったことにする制度なのです。
だから、争いが解決しない間に、
預かっておくという制度ではないのです。

宿題の事例で、
こちらが2000万円が正しいと思うから、
2000万円しか支払わないと言った場合、
相手は、それなら受け取らないと言うかもしれません。
その場合は、供託の要件を満たしますから、
2000万円を供託することができます。
ただ、代金が2000万円が正しいか2500万円が正しいのかは、
供託では解決しませんから、
訴訟で決着しなければなりません。

また、先週説明したように、
2000万円を相手方は一部として受け取ることもできますから、
相手はあまり困りません。
逆に、こちらが2500万円を支払うと言えば、
相手方が受け取らないとは言わないでしょうから、
供託の要件は満たさず供託はできないのです。

供託は、争っている最中に、
その金額を預かっておくという制度ではないことを
覚えておいてください。


■今週の宿題 ■
代金の支払について
公正証書を作成してある場合には
裁判を起こす必要はない。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年6月30日(月)

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