第199回
保証人になってもらわなければ
代表者個人から代金を回収できません。
最近の不況を反映して、
取引先がなかなか代金を払ってくれない
という相談が増えてきています。
その相談の中で、
物を売った相手が会社でも、
代表者個人が家を持っている、
あるいは高級車を乗っているので、
そこから回収できませんか
という相談を受けることがしばしばあります。
結論から言うと、できません。
例外的に、できる場合もあるのですが、
極めて難しいです。
この例外的にできる場合については、
後で説明したいと思います。
「物を売る」にあたっては、
会社と契約したら会社からしか
代金は取れないと考えておいた方がいいです。
理由は、会社と代表者個人は法律上別扱いだからです。
厳密に言うと、株式会社と有限会社の場合が、
会社と代表者個人の責任は別ということになっています。
会社と代表者個人が法律上別だということは、
会社の借金や買掛けについて代表者個人は
自分の財産を売ってまで支払う必要はないし、
代表者個人の借金などを
会社の財産から支払う必要はないのです。
相談者にこの説明をすると、
「そんな不合理なことってあるんですか?」
と言われることが多いです。
でも、このことは明治時代に民法と商法ができてから
ずっと法律ではそういうことになっているのです。
これまでは、会社であろうが個人であろうが
支払うことが当然だ
という高い道徳意識に支えられてきたことや
生活範囲が狭かったので
払わなければ、人として、会社として信用を失い、
業界にいられなくなったり、
生活がしづらくなったりする
という事実上の強制力が働いたことから、
会社と個人の区別なく、
財産がある限り支払ってきたと推測されます。
ところが、今は、法律上
支払う必要がないのであれば支払わない
という人も多くなっています。
しかも、争いとなれば、
裁判所は法律の範囲でしか請求を認めてくれません。
だから、会社に「物を売る」ときには、
代表者個人に保証人になってもらわなければ、
代表者個人に財産があったとしても
代表者個人の財産を差し押さえたりすることはできない
ということを忘れないでください。
■今週の宿題 ■
売買代金で、2500万円か
2000万円かで争いがある場合、
買主は裁判で決着するまで、
代金2500万円を供託しておくことができる。
○でしょうか? ×でしょうか?
お答えをお待ちしております。
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