第167回
弁護士の専門を説明するのは難しいです。
金曜日は、「弁護士の話」です。
よく、「専門は何ですか」と聞かれます。
この質問に対して答えるのはなかなか難しいです。
「専門」というのは、
その分野に詳しいという意味で使われたり、
その分野の仕事のみをしている
という意味でも使われたりします。
専門を説明するには、
そもそも分野を分ける必要があります。
前回説明した「専門は、刑事ですか?民事ですか?」
という質問であれば、分野は明確に分かれていますし、
取扱事件も民事事件がほとんどですから説明しやすいです。
「民事の中で、どの分野を専門としているのか?」
となると、途端に答えることが難しくなります。
そもそも、それは取り扱う会社の所属する業界
(例えば建設業とか、IT関連とか)のことなのか、
法律の分野のことなのか
(例えば、倒産法や特許法など)ということになりますが、
なかなか弁護士の取扱業務は
そんなにすっきり分けられないからです。
例えば、建設業関連を専門としても、
商法(会社法)はもちろんのこと、
独占禁止法や特許法など会社を経営していく上で
必要な法律を知らなくてよいわけではありません。
逆に、建設業関連の会社に必要な法律がわかっているのであれば、
それは他の業界の会社経営に必要な法律も
わかっていることにもなりますから、
どの業界に関する分野を専門とするというわけでもなくなります。
次に法律の分野毎に専門を分けるとしても、
弁護士は元々司法試験に合格しているのですから、
一般法については既に専門家です。
そして、会社が活動する上で、
どの会社も必要とするような独禁法や特許法
あるいは倒産法に関してある程度知っていたとしても
弁護士としては当然で、専門とまでは言えません。
どこまで知っていたら弁護士として専門と言えるかは
基準もなく難しいわけです。
だから、「専門は何ですか?」
と聞かれるとなかなか答えるのは難しいのです。
ちなみに、専門の基準が明確でないため、
弁護士会で、弁護士はこの分野が専門であると
広告してはならないことになっています。
広告する場合、「取扱分野」や「積極的に取り組んでいる分野」
あるいは「関心のある分野」という表現をすべきとされています。
僕のホームページでは、
「弁護士業務」という形で書いています。
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