第105回
人財をつくる その10
45日前 三進後一、ライオンはこうして獲物を取る

第1段階のテストの練習は店が閉店してから、
松井さんと佐々木店長のマンツーマンによる
自主トレーニングで始まりました。
松井さんは思いました。
何で佐々木さんは仕事が終っても、
会社に内緒で経費もかかるのに
私の練習に手を貸してくれるんだろう。

まだトーアーコーヒーさんのコーヒーを
買う契約もしていません。
ある面で、私はトーアコーヒーさんを
利用しているだけかも知れない。
感謝をしながら松井さんは不思議な気持でした。

佐々木さんも松井さんと同様に不思議な気持でした。
営業の中野さんから店を開店したい人がいる。
全く経験はないが、60日後には開業が決まっている。
他に社員も経験者もいないと云う。
何て云う無責任な人だ。
たった1ヶ月のトレーニングだけで店をやろうなんて
無茶だ無知だ。
話を聞いた時、佐々木さんは正直腹が立っていたのです。
しかもトレーニングに入ってからも
自ら積極的な行動を取ろうともしない。

ところが自分が松井さんに話しかけてから
今までと別人のように頑張る。
今では松井さんからエネルギーさえ感じる。
自分も他人のために
こんなに夢中になれたのは何年ぶりだろう。
松井さんを不思議な人だと思ったのです。

松井さんの頑張りを認めた佐々木さんでしたが、
松井さん最終テストになかなか受かることができません。
半自動エスプレッソマシンを用いて
キャラメルカプチーノ連続5回の調理を
成功させることが課題ですが、
5回目の2杯づくりで
どうしてもフォームミルクが『だれ』てしまうのです。
スチームの入れ方、
温度の見きわめが甘い事が原因です。

しかし松井さんはチャレンジを続けます。
6回目のテスト、
そこには今まで見た事のない様な
見事なカプチーノがありました。
たった一杯のカプチーノですが、
これからその1杯に
全ての人生を賭けることになるのです。

百獣の王ライオンは1匹のウサギをとる為、
3歩すばやく前に立ち、
さらに後に1歩下がって
勝てる確信を得てから襲いかかると云います。
松井さん、毎晩、三進後一を実践したのです。


『フロックで人生が成功する事は
1つとしてあり得ない』


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