第86回
店造りが始まった その1
85日前 厨房は店の心臓、小さな不整脈は命とり
松井さんはとうとう店の骨格
(コンセプト)を創り上げました。
自ら書き上げたコンセプトシートを読んで、
部下の斎藤さんにも読んでもらって、
コンセプトの一つ一つが遊び言葉になってなく
確実なものだと自信を深めました。
ストアコンセプトを1時間で書き上げて
成功した例もあります。
しかし松井さんは60日近くをかけて
一つ一つ仮説と検証を繰り返し
コンセプトを固めていったのです。
急がば廻れと云う格言通りでした。
このコンセプトシートが出来れば
次のステップに進みます。
いよいよ具体的な店造りに入っていきます。
芝さんからもらった
開店までのフローチャートによれば、
店舗設計より先に厨房設計となっています。
ストアコンセプトは、
商品対策がいかに大切か学んで来た松井さん
全くその通りと自覚していました。
厨房をどの様に設計、施工するかは
今までのカフェでは店舗設計のデザイナー
又は内装業者のどちらかに全て任すのが当り前でした。
しかし松井さんは設計と施工を分離する考えでした。
それは不動産業と関連する建築業界では当り前の事でした。
しかし現実は厨房設計士と云う専門職の人は
厨房工事メーカーに属する人が多く
人選に苦労しました。
そこでマンションを設計する
知り合いのデザイナーに紹介された
大手厨房メーカーの設計担当者に
設計を依頼する事にしました。
松井さんの条件は2つありました。
設計料はそのメーカーの製品を採用する事で
実費程度に抑える事と、
他社製品が良い場合は
そちらを優先的に採用して欲しいと云うことでした。
不況で仕事量が減って来た厨房メーカーは
二つ返事でその条件を受け入れてくれました。
『報酬は仕事の責任の度合いによって支払われる』
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