第77回
ブランドケーエイ学29:働く人がカッコイイ。

手を出す余裕はまだないが、飲食事業には非常に興味がある。
自分自身はぜんぜんグルメでもないし、料理も作らないから、客観的には相当距離があるように見えると思う。
しかし主観的には、この10年やってきてある程度自信ができた、デザインやマーケティングの仕事とかなり近いことじゃないかと思っている。
思うに、食とは「かくありたい」というライフスタイルそのものだ。食べ物というより、生活と価値観である。

そういうわけで、レストランのあり方、はやる店とそうでない店との違いには、人並み以上の関心があり、ぼくなりに仮説を立てている。
以前は、お店の主役はお客さんであって、働く人は「裏方」であったわけだが、近頃の活気ある店には、キッチンを見せるオープンキッチン式が多い。この考え方は大賛成だ。

オープンキッチンを支持する理由の一つは、「不信感」である。見えないキッチンでどんな人が作っているのだろうと思う。高校生が飲食店でアルバイトをして、それがどんなにテキトーだったか、実にいきいきと(!)内部告発するのを何度か聞いたことがないだろうか?
もうひとつ、それよりも大きな要素がある。きびきびと働く若者は本当にかっこいい。
そういう人を見ながら食べられるのは楽しい。人がかっこいいかどうかは、味のわからない人にもわかる。

スターバックスの失速が新聞で話題になっている。
ぼくはスターバックスの大ファンだが、残念ながら日本の店舗では、シュルツ会長が言うほどには、従業員のメンタリティーの違いが感じられない。マニュアル的な対応はマクドナルドと大きく変わらず、そのせいか、人間的なふれあいの場としての雰囲気もあまり実現されていないように思う。

スターバックスの日本法人をやっているサザビーは、経営者がシュルツ会長に手紙を書いて、スターバックスの欠点はフードだと指摘して、合弁のきっかけをつくったそうだ。彼らはスターバックスの理想も欠点も、はじめからよく理解していた。急激な出店攻勢のかたわら、原点が多少おきざりにされていた部分があったのではないだろうか。


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