第76回 イタリアではじまった「スローフード」の運動は、もはや一時的なブームではなく、今後もながくつづくトレンドになったといえる。これは「ファーストフード」の対極的な考え方で、質のよい食事のために、もっと手間ヒマをかけようという主張である。 ここからスローライフという言葉もでき、食べ物のみならず、生き方・暮らしかたについての哲学ともなっている。もうすこしゆっくり生きよう。環境と調和したより人間らしい生き方をしようと、田舎に引っ越してみたくなったりする都会人の価値観、というか「お疲れさん」的な合い言葉みたいな感じもある。 そんなスローなライフスタイルに、ちょうど適合しそうな組織のカタチに、NPOがある。といっても単純なボランティアのみならず収益事業もできる。法人にもでき、いまでは起業の一形態として、NPOという選択肢があるわけだ。 ぼくのときは、有限会社しか思い浮かばなかったけれど、なんとか社会の中で居場所をつくり自分に給料を払うことが、会社をつくった目的だった。成長とか利益とか考えもしなかったのだから、NPOでもよかったかもしれない。 ぼくらの社会では、明らかに付加価値を生む仕事であっても、利益を悪いものとしてとらえる傾向が根深く残っているので、事業によっては、NPOの方が展開しやすいことがあるように思う。仲介ビジネスなどは、NPO向きかもしれない。 さてスローとは、ふつう「スローダウン」を意味し、経済成長とは逆方向にある。人は報酬だけで働くわけではないけれども、やはり少しずつ給料が上がるということは、人生にとって必要だ。そのことが置き去りにならないか。 |
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