第71回
組織ケーエイ学27:コミットメント。

日産を建て直してヒーローとなったカルロス・ゴーンさんの記事には、注目している。
当初は「コストカッター」として恐れられていたけれど、いまでは組織を再活性させた彼らしい手法が絶賛されている。

いちばん先に挙げられるのが「CFT」(クロス・ファンクショナル・チーム)で、若手を中心にした、部署横断的なプロジェクトチーム。もうひとつ、彼のインタビューによく出てくるキーワードが「コミットメント」だ。仕事を任せると同時に、その仕事について「コミットメントするよう求める」。目標設定とか責任とか訳されるようだが、どうもニュアンスがよくわからなかった。

最近のベストセラー、IBMのガースナー会長が書いた「巨象も踊る」という本がこれまた面白い。彼もまた、存続さえ危ぶまれていた「巨象」を短期間で再建したヒーローだ。この本のなかでも「コミットメント」という言葉がよく出てくる。やはり責任とか、目標というニュアンスなのだが、あるページでは「情熱」という漢字に、コミットメントと読みガナがふってあった。

辞書で調べてみると、コミットメントには、「はっきり言明する」「言質をとられる」「拘束される」「仕事を引き受ける」という意味がある。つまり「目標を定めて、明確に実行することを約束し、成果が出なかった場合の責任をとる」というニュアンスである。
なるほど、それならば「情熱」をもって事にあたるだろうとも思われる。会社組織での、コミットメントの実質的な意味は、「できなきゃ辞めろ」ということになるだろうか?

ガースナー会長は、CEOに就任して最初の経営会議で話した内容が、そのままその後10年の経営方針になったという。彼はそのなかで「自分は戦略を策定する。実行するのは幹部の仕事だ。私に処理を委ねないでくれ。問題を上に上にと上げていくのはやめてくれ」と言っている。権限の委譲と「コミットメント」が、表と裏の関係として結びついているわけだ。

これからは、どこの会社でも「コミットメント」を求められることが多くなるのではないだろうか。その場合はもちろん、コミットメントするにふさわしい、権限が委ねられている、ことになるはずだ。


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