第69回
カネカネカネのケーエイ学14:補助金あてにすべからず。

サービス業で創業する人のために、新たな雇用補助金が導入されるそうだ。
前からあった「雇用創出」系の制度の延長で、雇い入れた従業員の給料の何分の1かを、一定期間補助するというもの。創業をめざす人は、このような補助金は、利用できるものなら利用した方がトクだ、と思われるかもしれない。
2000年ころ、わが社でもこの系統の補助金を申請をしたことがある。「評判が悪い制度だから、あてにしない方がいいヨ」と人から忠告されていたのに。

この補助金は、新規事業にチャレンジする会社に対して、雇用創造の観点から従業員の給料を補助するというもので、制度の趣旨は悪いものではなかった。
ところが運用実態は、ぜんぜん実際的でなかった。まず新規事業をやり始めた証拠に、設備を200万か300万買って領収証を出せという。これが旧来のビジネスの旧来の設備に限定されており、とても新しい業態のソフトビジネスに向いていない。

「補助金をやるから、このように金を使え」と言われたのでは、いちばん厳密で節約的な考え方をしなければならない時に、カネの使い方がねじ曲がってしまう。また「3分の1補助金がでるから」と、雇用する従業員の年俸の決め方も安易になってしまう。不相応な高額で雇ってしまったこのときの社員は、結局なにも貢献せずに、会社を辞めた。

申請の手続きが、これまた非常に煩雑でマイった。不正の多い制度であるから、運用が厳格なのは賛成できる。しかし、あまりに実質を考慮しない形式的・文言的な運用に、つきあうのがとてもバカらしかった。チンタラちんたら、くだらないことを何度も後追いで言われて書類を補正しているうちに、ついにぼくもキレてしまい、最後の最後に、申請を取り下げてきた。

100万の補助金を得ようと思うと、100万の売上げをあげるのと同じ手間がかかる。
「タダでもらえるカネ」に目がくらんで、本来なすべき正しい判断がねじ曲がるのがいちばんよくない。また本来の営業であれば、きちんと納めれば実績となって次の仕事を呼んでくれるものだが、申請のために費やした時間と労力は、なんの積み上げにもならない。

補助金は、依存性の強い、タチのわるい薬物だ。一時的にはラクにはなっても長期的には体質を弱くする。そう自分に言い聞かせて、「補助金依存」の考え方とは縁を切ることにした。これで会社が伸びていけば、カッコいいんだが・・・


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