第19回
ブランドケーエイ学6: このデザイン、好き?

デザインの評価は、基本的には主観による。
好きか、キライか。美的センスは人それぞれであり、
客観的にその価値を決めることは難しい。
趣味とか芸術の話であれば、話はそこで終しまい。
しかし商業デザインが、それなりのコストをかけて、
結果を求めるものである以上、投資効率を判断しうる、
なんらかの客観的基準がほしいはずだ。

デザイナーは自分のセンスを基準にして、カッコイイものを追求する。
営業マンは、それはさておき、顧客の好みに合わせてくれと主張する。
しかし顧客と言っても、大きな企業であれば、複数の人が関係している。
担当者とその上司、そのまた上司、社長。
大きな組織ほど、関係者も階層も多くなり、
その件について、誰が決定権を持っているのかよくわからない。

意思決定がどのようになされるか。
デザインのよしあしとか、コンテンツがおもしろいかどうか、とか
そのような「ソフト」の問題に関しては、多数決がいちばんいけない。
いろいろな意見が出てきて、どこかにガンコ者がいない限り、
妥協的にツギハギされてボロボロになってしまう。
上の者が決めるのも、困る。
若い人に買ってもらいたいような商品の場合、
50才前後の上司が、彼らのセンスを理解できないのは当然である。

結局、デザインは、私を基準にするのでもなく、
あなたを基準にするのでもない。
その商品を買ってくれる消費者に合わせるというのが正解だ。
しかし消費者といっても、これまた多様である。
いちいちアンケート調査すればコストがかかるし秘密も漏れる。
アンケート自体がそもそも多数決なのだ。

現代では、商品のターゲットが絞れないものは、
はじめから成功の見込みが薄い。
商品の顧客ターゲットを絞りこめば、
デザインの照準もそこに合わせることができる。

わが社では
「このデザインは、あなたにわからなくて当然です。
ぜひ息子さんに聞いてみてください」
とプレゼンテーションすることさえある。
危険このうえない問題提起であり、
よほど器の大きい人が相手でなければ、こんなことは言えない。


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