第18回
ブランドケーエイ学5: 考えるデザイン。

わが社は、だいたいは広告を中心とした企画とデザインの会社だ。
しかしデザインの会社、広告の制作会社など、
すでに世の中にうんざりするほどあって、
それぞれに顧客と仕事、人脈を持っている。
自分のビジネス経験といえば、銀行にいて外国為替をやっていただけで、
広告業界のことを知っていたわけでもない。
そんななかに新規参入して仕事を得るには、よほどの特徴が必要だと考えた。

最初のころは、妻を武器にした。
彼女のイラストレーションは、ラインが非常に新鮮で、色彩も美しかった。
妻を起点に、その人脈をたどってビジネスを始めたが、
少なくともこのイラストに関しては、わが社でしか供給し得ないものだった。
現在では、すぐれたイラストレーターが社内に3人いるが、
イラストはいまもわが社の個性だ。

また、デジタル系に強いということもある。
95年頃すでにイラストをアニメーションにしていたし、
96年にはオンラインマガジンを公開し、
日経新聞のホームページランキングで全国16位にランキングされた。
我々のホームページはデザインが美しく、
表示スピードが速いことが特徴だった。
翌年、企業ホームページ広告によって、
朝日新聞社のデジタル広告賞最優秀賞を受賞した。

イラストとデジタル。
二つの個性によって差別化しようと考えていたが、
現在ではイラストも使わず、デジタル技術を
駆使するわけでもない仕事も増えている。
それでも、わが社は、他と差別化できる特徴をもっている。
それはデザインの企画性、すなわち「考えるデザイン」ということだ。

デザイナーの多くは、そのデザインがカッコイイかどうか、で勝負している。
じっさいグラフィックの感性において、非常に進んでいる人たちもある。
しかし、カッコイイかどうかはかなり主観的なもので、
それを理解しない人には全く訴えないことに注意すべきだ。
カッコイイかどうかと、趣味の違う人たちで議論しててもはじまらない。

商業デザインには、もっと客観的な判断基準がある。
それが「考えるデザイン」の出発点だ。


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