第769回
「定年前後の離婚は男にとって大問題です」
邱さんは『死に方 辞め方 別れ方』で
「これからの客観的条件は
アメリカより一足遅れたが、
日本においても、
いずれ同じように備わってきたから、
同じ現象が日本を風靡するようになることは
まず間違いない」として、
離婚の増加を予測しています。
また中高年の男性が
実際に離婚話を持ちかけられたときに
おちいるであろう男性の心理を
巧みに描いています。
「問題になるのは中年から以後、
たとえば定年の前後に
夫婦間の不和が突如、表面化し、
別れ話が起こる場合である
一昔前ならば、男の浮気とか、
経済的な崩壊などが契機になって
夫婦間に危機が訪れたが、
子供が一人前になったり、
性欲が衰えて浮気のチャンスが減れば
仲直りすることが多かった。
ところが、最近は全く逆に、
もう子供も一人前になったし、
子供の縁談で引け目を感ずることもないから
『私も辞めさせていただきます』
といった申し出が多くなった。
男に定年があるように、
妻にも定年みたいなものがあって、
それを望む女性が増えたのである。
私は男が一生、健康で暮すためには、
『死ぬまで現役』が理想であると述べた。
この意味で、定年のある人生は気の毒であり、
定年のある職業に就いている者は、
『定年後渡りに船』と乗り継いで行けるような職業、
もしくは職業に近い趣味を
あらかじめ見つけておく必要がある。
この乗り継ぎだけでも、
男にとっては大変な仕事であるのに、
最後の砦と思っている家庭へ帰ってきて、
また奥さんから、
『長いことお世話さまでした。
今日限りでおいとまさせていただきます。』
と言われたのでは、船を乗り換える間際に
後ろから押されて水の中に
つきおとされたようなものである。」
(『死に方 辞め方 別れ方』)
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