Qさんは、かつて「知恵は借り物でも知恵である」と書きました
そういうことをおっしゃる人の知恵ならいくら借りてもモンクは出ませんね

第317回
「時間はお金と同じくらい重要なテーマ」

「邱永漢」という一人の作家の著作を追っていくと、
著作の一冊、一冊に、誕生にまつわる
興味深い話があることに気づきます。
『野心家の時間割』という本も
世に出るまでに紆余曲折がありました。
『楽天家でなければ生きられない』
という本に書かれていることにしたがって、
『野心家の時間割』誕生のいきさつを追うことにしましょう。

「まず書きはじめたのは
『夕刊フジ』に連載を依頼されたのがきっかけだった。
先方はマネー語録のようなものをといったが、
私は利殖の本を書くことにはいささか食傷していたし、
『タイム・イズ・マネー』と言うように、
時間は即マネーでもあるし、
時間の使い方について書かれた本が少ないので、
読者にとって同じくらい興味のあることだと考え、
要求されたページ数に合わせて、
6回分書いてまとめて渡した。

すると、編集長が担当記者を通じて
私に原稿を突き返してきた。
テーマについて先方の要求通りでなかったことは確かだが、
私の執筆者としての地位からいったら、
たとえ行き違いがあったとしても、
できあがってきた原稿を
そのまま突き返したりしないのが常識である。

常識のない編集長だなと、私はびっくりしたが、
ちょうど原稿を頼みにきた
『BIGMAN』誌の編集長にわけを話したら、
その場で引き受けてくれて、
1983年8月号から翌年の7月号まで一年間、
同誌に連載をした。
それだけでは一冊分に足りないので、
残りは『大阪新聞』に『せっかちの言いわけ』と題して、
その応用編のような形で執筆した。

両方合わせて単行本にして出版したら、
ベストセラーの仲間入りをしたので、
やっぱりホットなテーマじゃないか、
原稿を私に突き返した編集長は
編集者としてのセンスのない奴だと、
ちょっとばかり溜飲が下がった。
いまでも私に原稿を返しにきた
若い記者の恐縮した態度を思い出すと、
気の毒な目にあわせたなあと同情を禁じえない」
(『楽天家でなければ生きられない』)


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2003年7月10日(木)

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