第290回
「新旧の交替の波をひき起こすのはズブの新人」
私が河野さんに「古書通販システム」を
開発したときのことを聞く中で、河野さんは
「古書販売の業界の人たちから
『シロウトがあれこれ口を出すな』
といわれたことがありました」
と裏話の一端を披露してくれました。
私はそうした話をききながら、
邱さんが『斜陽のあと陽はまた昇る』
という本で書いた文章を思い出しました。
私が思い出した文章を引用します。
「斜陽化しつつある業界に割り込んで、
新しい革命をもたらす人があるとすれば、
それはいままでその業界と関係のなかった
ズブの新人に限られる。
スーパーマーケットをはじめた人も、
リースマンションをつくった人も、
それまでに、雑貨屋や酒屋や、
あるいは警察官やマンション屋だった人たちではない。
いままでその業界の常識の中に
たっぷり浸っていなかったからこそ、
どういう具合にすれば
新しい商売のやり方ができるのか、
着想することができるのである。
したがって斜陽化した業界で、
たっぷり過去のやり方に浸ってきた人に、
斜陽化した自分の事業を建てなおすことはできない。
その人にできることがあるとすれば、
今までにやったことのない仕事に進出して、
ズブのシロウトの目でその業界を観察し、
自分なりの新機軸を出すことであろう。
そうすれば、お互いにマンネリのしがらみから
抜け出すことができると思うのだが、
年をとってくると激しい流れの中で、
船を乗りかえることを怖れる人が多くなる。
そのために沈む船に乗り込んだまま、
下りるに下りられず、
斜陽化を乗り切ることが
できなくなってしまうのである。
したがって、いったん沈みかかった陽が、
また同じ人に微笑みかける可能性は残念ながらあまりない。
陽が沈めば、それと入れかわるように
同じ場所に必ず朝日がまた昇ってくる。
しかし、そこに立っていた人とは同じ人ではなく、
『年々歳々花は相似ても、人は同じからず』
ということが起こってしまうのである。」
(『斜陽のあと陽はまた昇る』)
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