第296回 (旧暦12月3日)
「門松」のちょっと得する利用法
クリスマスが過ぎると、街は一気に歳末モードに切り替わり、
花屋ではポインセチアが引っ込められて
門松用のマツが店頭を飾ります。
日本の古代信仰では、松は神が天降る木とされ、
それを「待つ」ところから
「マツ」と名付けられたといわれており、
正月に戸毎に門松を立てるのも、
その松を依代(よりしろ)として
家々に歳神(としがみ)が天降るのを
「待つ」という意味が込められているのだそうです。
また、武士の時代になると、庭木を植えるにも、
秋に葉を落とす落葉樹は「衰退・衰亡」を示唆するとして嫌われ、
1年中緑を保つ常緑樹を好んで植栽する傾向が表われ、
常緑樹である松は、その意味でもオメデタイ樹として
日本人の心の中に根を下ろしてきたのでした。
さて、そのマツですが、薬理的に見ると、
材から抽出する樹脂(テレピンチナ)には皮膚刺激作用があって、
古くから筋肉痛、打ち身、肩こり、あかぎれなどに
膏薬(こうやく)として使われてきましたし、
葉には約10種類におよぶ精油成分やクエルセチンが含まれており、
松葉酒(ホワイトリカー1.8Lに対し、生の松葉1.5L)にして
高血圧の予防や血管強化、冷え症などに用いるほか、
葉の煮汁を加えた湯で入浴すると、
神経痛やリウマチの痛みを和らげ、
風邪の予防にも効果があります。
それに、中国の本草書の古典である『本草綱目』(1590年)には、
松葉の効用のひとつとして「毛髪を生じ」とありますから、
オツムが薄くなって気になる人は、
「神(カミ)」を待って立てた門松を利用して松葉酒を作り、
今度は別の「カミ(髪)」を待つことにしたらどうでしょうか?
ちなみに、マツを薬用にする場合、
日本では、もっぱらアカマツが使われてきましたが、
これはクロマツよりもアカマツのほうが
中国で薬用されるシナマツに近いからで、
成分的にいえばアカマツもクロマツも
ほとんど違いはありませんので、アカマツだけにこだわらず、
クロマツのほうもドシドシ利用すればよろしい。
ところで、このコラムは、年内は今日で終わりとし、
新年7日から再開させていただきますので、よろしく御了承の程。
それでは皆さん、良い年をお迎え下さい。
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門松が並ぶ正月飾りの売店 |
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