旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第139回
旅行者を軽く見た中国プロモーション

昨年、2002年は中国にたくさんの旅行者が行きました。
出張関係者やバックパッカーたちだけでなく、
一般の旅行者が大勢出かけていったわけです。
航空会社や旅行会社も中国の旅行を積極的に販売しました。

ところが、SARSが発生すると、まさに潮がひくように
日本人旅行者がいなくなってしまいました。
今では、すっかりもとのビジネス向けの国になってしましました。
台湾がSARS後、急速に人気が回復していったのとは対照的です。
しかし、別に中国が変わったわけではありません。
発展する都市あり、雄大な自然あり、素朴な風景あり、の、
バラエティに富んだ今の中国があるだけです。

あのブームは、仕組まれたものだったというのが私の見方です。
2002年の4月、成田空港に新しい滑走路ができました。
しかし、その滑走路は長距離路線の旅客機を飛ばすには短い。
近距離の旅行地にしか飛ばせないものだったのです。
実際には、韓国や台湾、中国などしか行けません。
その中で飛行機の便数を大幅に増やし、
旅行者を大量に送り込める可能性があるのが中国で、
業界あげての中国プロモーションとなったのです。
言わば消去法で、選ばれたわけですから、無理もあります。

ある航空会社のポスターを見たときは特に違和感を持ちました。
まるでニューヨークのタイムズ・スクエアのような風景をバックに、
二人の女性が楽しそうに写っている。おそらく上海だと思いますが、
そんな場所は中国のほんの一部にしかすぎない。
しかし、「そんな場所」をイメージして中国に行った旅行者もいます。
そして、「全然違うじゃない」との感想をもって、
帰国したとしても不思議ではありません。
そんな人はリピーターにはならないでしょうし、
リピーターが増えなければ、ブームは自然に終わります。
もしかすると将来的には「そういう場所」がもっと増えるかも
しれませんが。いずれにしろ、去年の段階では無理がある。
滑走路ができるから宣伝をする、そういう考え方も不自然。
関係者は旅行者を軽く見ていたといえます。
中国に限らず、観光のプロモーションでは一部の
イメージだけをクローズアップしたものがあります。
そんなものに惑わされず、本当の現地を知ることが大切。
それが旅行の醍醐味ともいえるわけです。


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