旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第78回
「戦場」を見てみるのも悪くないかもしれません

たまに旅行や取材中に歴史の「暗部」に触れることがあります。
昨年2月に訪れたニューヨークのグランド・ゼロもそのひとつです。
行く前は、報道から得た知識でもって、頭であれこれ考えました。
アメリカの政治がどうの、テロリストがどうの、と。

しかし、実際にワールド・トレード・センターの跡地を見たら、
何にも考えられませんでした。テロ事件から5か月ほど
経っていましたが、当初の凄まじさが、まだ確実に残っていました。
テレビや新聞やインターネットで見ていたものは、
まさにヴァーチャル、偽者であることを改めて知りました。
1960年代、昭和40年代生まれの私の世代は、
平和にどっぷりとつかって育ちました。
ですから、こうした場所に免疫がありません。
ですが、戦場というのはこういうものではないかと想像するのは、
そう難しくはありませんでした。

広島と長崎の「グランド・ゼロ」、すなわち爆心地にも行きましたが、
あれほどの衝撃は受けませんでした。
もちろん広島や長崎はもっと凄まじく、悲惨な経験をしたわけです。
ただ、時間があまり経っていない分だけ、
ニューヨークのグランド・ゼロには事件当時の凄まじさが
より濃く残っていたのだと思います。
ふだんは戦争のことなどあまり考えませんが、
8月15日ということもあり、
旅の途中で見た人類の暗部について書いてみました。


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