第67回
航空運賃の自由化で新幹線のサービス改善
8月の帰省ラッシュが近づいてきました。
故郷行きのきっぷを確保されている方も多いことでしょう。
そんな時節柄、数日前の朝日新聞に、
航空会社とJRの顧客獲得競争の記事が出ていました。
2000年4月の航空法改正で、日本の航空運賃は
事実上自由化されました。私はその年に、
「ズバリ!安くて速いのはどれ?
国内格安VS割引航空券VS新幹線VSバスetc.」
という書籍を刊行しましたが、
そのときに感じたのが、飛行機を使うか、新幹線を使うか、
分岐点は東京−広島、岡山あたりの区間にあるということでした。
東京から名古屋までだと飛行機に勝ち目はありませんし、
飛んでもいません。大阪までなら条件は同レベルでしょう。
福岡まで行ってしまうと、これはもう飛行機の方が楽です。
その中間の岡山や広島でも、飛行機の方がやや楽に感じます。
ただ、同じ新幹線でも「のぞみ」なら、岡山くらいまでなら、
新幹線でもいいかというのが実感です。
ただ、飛行機には航空法改正で様々な割引運賃が設定される
ようになりましたから上手に使えばかなり安く乗れる利点がある。
実際、東京−大阪、岡山、広島といった区間では
飛行機を利用する人の割合が増えているそうです。
JRも新幹線に割引運賃を設定せざるを得なくなったのでしょう。
これまでも、部分的な値下げはあっても、
全区間を対象にした値下げは初めてだということです。
とはいえ、航空会社も最初は値下げに積極的だったかは疑わしい。
1996年に国土交通省(当時の運輸省)が「幅運賃」、
つまり一定の運賃幅の中で割引料金を設定できる
運賃を導入したとき、
ある航空会社が「早割」運賃を設定しました。
しかし、その運賃で予約できる席が少ないとの苦情が、
利用者から相次いだことがありました。
その後は周知の通り驚くほど安い運賃が出るようになりましたが、
当時は、航空会社側が利益の高い国内運賃を値下げするのに、
消極的なのではないかと言われたものです。
さらに言えば、運輸省が航空運賃の自由化を進めたのも、
海外の航空運賃に比べて日本の空には割引運賃が少ないと、
されていたからです。規制緩和が叫ばれ始めた当時、
世論の後押しがあったことも事実です。
そこには、国際的な圧力、すなわち外圧から始まるという、
日本産業の典型的な規制緩和の姿があったわけです。
それが、今回の新幹線のドル箱「のぞみ」に割引運賃を
設定させるところまで至ったということでしょう。
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