第12回
キムタクは「理想」のパイロット
ちょっと古い話ですが、タレントのキムタクこと、
木村拓哉さんが主演したドラマが大ヒットしましたね。
私も映画やドラマは嫌いではありませんので、
キムタク扮する副操縦士の純粋な気持ちに、
思わず目頭が熱くなったりしました。
一方で、あのドラマを観ていると、複雑な気持ちにもなりました。
ご存知の通り、航空会社は大手を中心にかつてないほど
苦しい経営状態となっています。
一昨年のアメリカ同時多発テロ事件やこの間のイラク戦争、
SARSの流行といった外的要因に加え、
業界内での激しい乗客獲得競争、運賃競争などで、
「自転車操業」的な状況に追い込まれているところは多い。
私たち乗客は、少しでも安い値段で乗ろうとするわけですから、
運賃を上げるのは難しい。そうなると、利益を確保するためには、
コストを見直す方向に行くわけです。
10年前に、大手航空会社がアルバイト・スチュワーデスの採用を
発表したところ、 時の運輸大臣から、
「客室乗務員がアルバイトとはいかがなものか」といった
クレームがついたことを覚えている方もいるはずです。
あれは正社員より賃金の安いアルバイトの客室乗務員を採用して
コストを削減する狙いがあったわけで、結果として、
アルバイトの客室乗務員は続々と採用されるようになりました。
そして最近は運航乗務員の賃金カットが課題になっているのです。
すでにアメリカでは年間1万5000ドル前後という、
格安な年棒で働くパイロットも珍しくなくなっています。
あまりに彼らの賃金が安いと乗る側としては心配になりますが。
キムタクのドラマでは、パイロットたちの「空が好きだ」、
「飛ぶのが楽しい」といったセリフが何度となく出てきました。
賃金が安くなっても、そんな純粋な気持ちで働けるパイロットは
職業人として「理想的」ですし、会社側からしても、
まさに「理想」のパイロットといえるのでしょうね。
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