第2116回
「週刊金曜日」の書評
6月に入って、総合誌「SAPIO」に
評論家の川本三郎さんによる書評が掲載された。
さらに、6月5日「毎日新聞」朝刊、
6月6日発売「週刊金曜日」と立て続けに
拙著「大正霊戦記―大逆事件異聞
沖野岩三郎伝」が
講評された――、
こうした渋い内容の近代史本など、
書店でもなかなか取り扱ってくれない時代に、
本のプロが中味を読んだうえで、推奨してくれるとは、
まさに「本の本音」で選ばれたことになりますから、
これほど嬉しいことはなかった――という話の続きです。
さて、6月6日発売「週刊金曜日」の書評欄では、
冒頭の「きんようぶんか」という全1ページで、
「魂の遊撃戦を継ぐ者は、誰か?」と題して、
大逆事件・秘史を描いた拙著のテーマを
今日の日本人に連なる「精神史」の課題として捉える
かなり格調の高い評論です。
書いて下さったのは作家の山口泉さんです。
山口さんは、このコラムでも紹介しましたことがありますが、
「反戦、自由、平等」を目指す「魂の共和国」構想を、
小説や論文、エッセイ、童話といった著作のみならず、
実際に、アメリカ、ヨーロッパ、
韓国、中国などのお仲間とユートピア実現を実践し、
さまざまな文化活動を繰り広げている人です。
自らも「魂の連邦共和国へ向けて」※1
と題するサイトを開いていますから、
まさに100年前に起こった
「反戦、自由、平等」への言論弾圧劇を扱った
拙著に、いちはやく関心を示してくれたことになります。
詳しくは「週刊金曜日」※2を読んでいただきたいのですが、
少し、抜粋紹介させていただきます。
「(略)いわゆる『大逆事件』は、
実はいまなお終了してなどいない。
戦後も遺族・関係者らの手によって行われてきた
再審請求は、六七年七月、
最高裁大法廷で棄却されるが、そのこと自体が
明治期と現在のそれとの国家としての本質的な
連続性・一貫性を露呈した出来事だろう。(略)」
この部分が、作家・山口泉さんの確固たる近代史観であり、
奇跡的に逮捕をまぬがれた一人の牧師が、
「秘密伝道作家」に転進して奮戦する40年間をテーマとした
「大正霊戦記―大逆事件異聞 沖野岩三郎伝」を
位置づけた評価のポイントです。
さすが、山口さんの鋭い書評ですので、「週刊金曜日」※2
を読んでいただいた上で、拙著を紐解いてもらうと、
「なぜ、いま『大正霊戦記』なのか?」
これからは、「なぜ生命平等主義(バイオセントリズム)」
の時代であるか」といった
スピリチャルな命題の答えも掴めるはずです。
こう書いてくると、山口泉さんは、
なんともいかめしい作家のように思うかも知れませんが、
普段の素顔は、東京芸術大を出られた画家であり音楽家です。
顎鬚はいかめしくても魂の深い、とても心優しい人です。
ときどき、スローヘルス研究会にも
顔を出していただいていますが、この書評でも、
他人をいたわりつつ、描写することを忘れない人です。
「(著者は)退職後、発覚した進行性の食道癌に対し、
医師の甘言と恫喝で勧めた手術を拒否。(略)
病を養いつつ現地取材も繰り返して綴られた本書(略)」と
本書の表側からだけでなく、製作・造本の裏側からも
まさに全体的(ホリスティック)に高評していただき、
ほんとうに有り難いことでした。
※1 http://www.jca.apc.org/~izm/
※2 http://www.kinyobi.co.jp/Recen
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