第2115回
「ピッピッピッ」と鳴ったら“売れない本”?
先日、NHKの番組で、
出版不況の実態といった番組を見ました。
本が売れない原因を探る番組でして、
実に面白いものでした。
みなさんも見たかもしれません。
いま書店が本を書棚に並べる基準は、
取次店のPOSシステム調査に基づいた、
「売れ行き本・ランキング」で自動的にやっています。
本の裏にあるバーコードにPOS機器を当て、
「ピッ」と一つなったら、本を平積みにする。
(これは売れる本と言う意味)
「ピッピッ」と二つなったら、背表紙だけが見えるように
本棚に差し込む。(まあまあ売れる)
「ピッピッピッ」と鳴ったら、この本は“悲劇”です。
「抜き取り」という文字画面が出て、
店員がすぐさま、本を返品とする・・・
こういう合理的というか非情な仕組みになっているからです。
「本のランキング」の5000位に入らないと、
書店から、瞬く間に消えていく仕組みです。
なるほどね。
みなさんも、よほど大きな書店に行かないと、
目指す本にはめぐり合えないということになり、
出版社も機械の指示する「売れ筋本」におもねって、
同じようなタイトルの本を作りまくる、
そうした理由がよく分かったと思います。
これが出版不況の悪循環的な実態というわけです。
ですから、一方で、僕も大いに活用していますが、
書棚の面積に制限のない、
アマゾンやセブンアンドワイのような
オンラインBOOK通販サイトがにぎわい、
古書ネットなどが重宝がられるということになります。
さて、こうした出版不況構造は
前からわかっておりましたから、
今発売している拙著「大正霊戦記―大逆事件異聞
沖野岩三郎伝」
といった渋い内容の本は、自社出版で刊行にして、
オンラインを中心に売ろうと考えたわけです。
幸いにも、大きな書店の中には、
「ピッピッ」と二つ鳴ることもあるようで、
結構、追加の注文も来ているようです。
いづれにしても、拙著のような歴史資料本は、
売りにくい時代となりましたが、
お蔭さまで「いい本だ」というので、
各紙誌の書評は続けて出ていることは有り難い限りです。
まえに「週刊ポスト」「南紀州新聞」の書評については
紹介しましたが、6月に入って、総合誌「SAPIO」に
評論家の川本三郎さんによる書評が掲載されました。
そして、さらに、
6月5日「毎日新聞」朝刊、
6月6日発売「週刊金曜日」と立て続けに
「大正霊戦記―大逆事件異聞 沖野岩三郎伝」が講評されました。
6月5日「毎日新聞」朝刊には、全7段の大スペースに、
「本の『プロ』に聞く、話題の本――、
『本屋さんの本音』」という新刊紹介頁がありまして、
全国有名書店の本のプロが推奨している8冊が掲載され、
その1冊に「大正霊戦記」があげられたのです。
推奨してくれたのは、栄末堂書店(蒲田東急プラザ店)
の安田友久さんです。
「ピッピッ」と機械が本を判断するのではなく、
本のプロが中味を読んだうえで、
推奨してくれるとは、
まさに「本の本音」で選ばれたことになりますから、
これほど嬉しいことはありませんでした。
ま、渋い内容の本ですが、興味のある人は、
手にとってじっくりと読んでみてください。
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