第1981回
雑誌よ! ダイナミックな「直感」で作れ
世の中は便利主義が常識、
拙速主義が当たり前とされているから
医療に限らず、経済予測や企業経営予測、
株式予測にしても、
いい加減な評論家の「あとづけの数字」などに
騙されてはいけない――、
ガンの検査数値、中国株の統計予測、
さらに商品開発の「こじつけ数字」・・・
いのちにしても、お金にしても、株にしても、
これからは「数字」より「直感」を、
もう少し大事に考えようという話の続きです。
前回、ベストセラー本に気をよくして、
続編もその売れ行き数字をなぞって、
とんでもなく刷り過ぎて、在庫をたくさん出して、
出版社の担当者が泡食ったらしい――、という話を書きましたが、
小役人まがいに過去の数字を弄繰り回して
販売部数を決める「数字偏重主義」とは、
どうも、商品企画や編集企画、さらに
未来プロジェクトを志す社員の気勢を削いで、
不況の企業や産業がますます元気を失うことが
最近、目立つようになりました。
ちなみに、サブプライム騒動の後、
日本株から外人投資家が
大挙して逃げだして株価が暴落したのは、
日本の国家予算に匹敵する
サブプライムバブルの数値ばかりが影響しているからではなく、
おかしな「数字」や「統計」に振り回わして、
これからの「直感的産業」が見えにくい国だなあと
見切りを付けられたからではないでしょうか?
「直感」の育たない社会に元気のパワーは生まれません。
不況の出版界の話をもう少ししましょう。
僕の知り合いの情報通が、
ABC調査という
主だった雑誌の実売部数を示す「数字」を持ってきてくれました。
30年前に、
僕が週刊ポストという週刊誌の編集長をやっていた頃は、
週刊ポストに限らず、
100万部近くを売る週刊誌はいくつもありました。
ところが、いまは、
以下のように惨憺たる元気のない「数字」だそうなのです。
●日本ABC協会発表の2007年上期の雑誌販売部数――
※( )内は、10年前と比較して減った実売部数。
・週刊朝日 18万9千部(▲ 18万7千部減)
・サンデー毎日 8万5千部(▲ 8万6千部減)
・週刊新潮 47万3千部(▲ 4千部減)
・週刊文春 52万6千部(▲ 11万1千部減)
・週刊現代 34万9千部(▲ 35万7千部減)
・週刊ポスト 35万4千部(▲ 50万部減)
・週刊女性 21万5千部(▲ 24万2千部減)
・女性自身 31万5千部(▲ 26万2千部減)
・女性セブン 32万5千部(▲ 19万4千部減)
この販売不振、
赤字運営の原因はインターネットや携帯電話の普及だ、
名誉毀損やプライバシー侵害などの
マスコミに対する倫理規制が強くなったことだと
出版評論家が「数字」を挙げて分析していますが、
とにかく、出版界は企画というより、
販売数字偏重主義に陥ってから、
ますます元気を失ったことになります。
こうした「数字」を毎年、毎月、毎週、見せつけられては、
編集の現場も、なかなかダイナミックな企画を
出せるものではないでしょう。
しかし、サブプライム騒動を契機に、
中国、ロシア、インドなどの新興国がパワーを増し、
こんどは日本の企業を買収しに来たり、
日本に中国人や韓国人などの観光客が
大挙してお金を落としにやってくる、
また環境保護が問題視され、
やがて、月に資源を求める時代となりますから、
こうした予兆を
「数字」で近視眼的にマイナス思考するのではなく、
もっとダイナミックな「直感」を発揮して、
プラスのパラダイムを構成できるチャンスと考えたらどうだろう。
「そんなメディアに作り変えていくチャンスのときだ」
「そろそろ『直感』の時代が来るはずだ」と、
僕は楽しみにしているわけなのです。
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