元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1948回
時代に流されずに生きるには?

作家の猪瀬直樹さんから送られてきた
2冊の新刊本、「作家の誕生 (朝日新書) 」
「空気と戦争 (文春新書)」の紹介の続きです。

いまは昔のように軍閥、戦争といった目に見える「敵」ではなく、
目に見えにくい「敵」と闘う時代だ――
その見えにくい「敵」のひとつが
「無責任の装置」である官僚機構だ――
近代戦争を体験した日本という国の将来はもちろんのこと、
これから、読者ひとり一人が
「時代に流されずに生きるにはどうすればよいか」――

こうしたメッセージが、この二つの新書本に共通するテーマです。
とくに「空気と戦争」はなるほどなるほどと
ちょっとややこしい近代日本史の謎が解けていきますから、
僕は一気に読んでしまいました。

この本を紹介するリードに
「太平洋戦争という日本の針路決定の陰に、
二十代、三十代の若者達の戦いがあった!
東京工業大学の学生に向けた、
目からウロコの名講義を再現」――と書いてある通り、
いまの20代、30代には、なかなか理解しにくい昭和の戦争ですが、
そこから学ぶべき今日的ポイントが、テレビの歴史ドラマでも
見るようにドキドキしながら楽しめます。

猪瀬さんには
「日本人はなぜ戦争をしたか昭和16年夏の敗戦」
という著作がありますが、
それをもとにして、日本の太平洋戦争で敗れたのは、
いわゆる終戦時の「昭和20年夏」ではなく、
じつは開戦直前の「昭和16年夏」であるというテーマですから、
ちょっとミステリーみたいで、
あなたも読みたくなりませんか?
開戦半年前に内閣総理大臣直轄の
「総力戦研究所」が急遽、開設され、
軍人5名を含む官僚27名と、
マスコミ、学者など民間人をあわせた
20代、30代の俊英36名で組織。
「模擬内閣」を作って国民精神力、船舶輸送力、物資自給率、
資金、労務など、綿密なデータから戦争遂行の国力判定をしたが、
20歳も30歳も年齢が上で
「日米開戦」に傾く現実の軍閥内閣とは見解が逆になった――、
20代、30代の「模擬内閣」は、
戦闘より石油の輸送の方が問題だとして、
戦争は長期戦となり、
最終局面ではソ連が参戦すると予測して、
総辞職する――というのですね。

「日本は開戦前に負けていた」として、
猪瀬さんはこういいます。
「なぜ戦争をしたか。僕の結論は、
そこに軍国主義があったからという理由がすべてではない」
「意思決定のプロセスのなかで
数字データのインプット・ミスとか、
あるいは最終決断にあたって自己責任の放棄とか、
いま起きていることと同じような日常性が
日米戦を呼び込んだのではないか」と。
まさに事実は小説より奇なり、歴史は繰り返す――といいますが、
そうした近代日本の官僚制の無責任な「ムード」、
いや日本全体に連綿と流れ続ける奇妙な「空気」を、
猪瀬さんは山本七平氏の名著「空気の研究」を引用しつつ、
その正体は「同調行動」にあるとしています。

今月は、太平洋戦争開戦から67年目です。
大正や昭和の政治、経済、軍事の決断の歴史とは、
いまの20代、30代にまったく関係ない話ではありませんよ――、
と、人気の大学教授でもある作家の猪瀬さんは、
次世代に向けてメッセージを送っているわけです。
ぜひ、冬休みに猪瀬さんの「名講義」本を読んでみてください。
目からウロコが落ちます。
時代に流されない生き方が分かります。


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2007年12月27日(木)

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