元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1947回
行動する作家・猪瀬直樹さんの新刊本

ことしの6月28日、東京都副知事に任命されて半年、
忙しかったのでしょうね。
久しぶりに、作家の猪瀬直樹さんから
新刊本が2冊ドサッと送られてきました。

猪瀬さんと僕は、
「いのちの手帖」第3号を読んだ方ならご存知のように、
僕が現役の週刊誌の編集長の頃に、
「ミカドの肖像」という大作をお願いし、
それから20年のお付き合いさせていただいている関係です。
たくさんのノンフィクション小説やエッセイ、論文で、
鋭い切り口と綿密なデータを駆使して、
無責任な官僚構造を批判し、
日本復活のシナリオを提案するだけでなく、
実際に自らが大組織に飛び込んで、
副都知事や道路公団民営化推進委員など就任し、
現場の先頭を切って、メスをいれる――、
絶えず、闘う作家として挑戦し続けるパワフルな人ですから、
みなさんも本を読んだり、
テレビで話を聞いたことは多いと思います。

さて、送られてきたのは「作家の誕生 (朝日新書) 」
「空気と戦争 (文春新書)」というどちらも新書本です。
よく、多忙な中で本を書く時間があるなあ
と感心しているのですが、
「空気と戦争」は特任教授をされている
東京工業大学の特別講義で、
また、「作家の誕生」はNHK人間講座の講義に
加筆した書下ろしだそうです。

いずれも縦横に駆使した統計数字や知られざる歴史スクープ、
また足で綿密に取材した
当時の作家や政治家や
軍人や実業家の軌跡が展開されていますので、
僕は、吸い込まれるように一気に読んでしまいました。
とくに、学校では習う機会の少ない、
大正や昭和が、いかにいまの時代の礎となったか、
さらに、その時代の遺産が、いかに、いまの僕たちの
社会や家庭や個人の生活に影響しているか――、
自分の生まれる前の時代が理解しにくい20代にも
噛んで含めるような面白い例え話を挿入して
わかりやすく説き起こしてくれていますので
この年末年始休みの必読の一冊に加えることをお勧めします。

「作家の誕生」は、夏目漱石、芥川龍之介、菊池寛、川端康成、
大宅壮一、太宰治から三島由紀夫、吉村昭まで、
作家が職業として成り立ち、
出版が儲かるビジネスとして成長して行く
近代100年の軌跡を、
痛快なゴシップを交えて俯瞰する読興味深いみ物です。
その歴史の中で、文豪といわれ、また巨人といわれた作家たちが、
いかに「時代の敵」と闘ったか?
解き明かされていくわけですが、
いまは昔のように軍閥、戦争といった目に見える「敵」ではなく、
目に見えにくい「敵」と闘う時代だ――として、
以下のようにメッセージを送っています。

「敵が消えた。つまり大きな物語が消えた。
それでは作家としてなにをしたらよいのか。
眼前の敵が消えた代わりに、なにか隠れたシステムに
支配されているのではないか。
それを『視えない制度』と名付けてみた」

このあたりがフツーの文芸評論とは大いに違う
猪瀬さんらしい持ち味ですが、
その見えにくい「敵」のひとつが
「無責任の装置」である官僚機構だ――と指弾し、
行動する作家として
次世代にメッセージを送り続けているわけです。

さて、近代戦争を体験してきた日本という国の将来はもちろん、
読者ひとり一人の問題として、
「時代に流されずに生きるにはどうすればよいか」――
さらに深く問いかけているのが、
猪瀬さんのもう一つの新刊「空気と戦争」なのです。


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2007年12月26日(水)

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