第1876回
インターネットは患者の「強力武器」
明治薬科大学薬学部社会学研究室の
専任講師・小松楠緒子さんから送られてきた
「インターネットによる患者のエンパワメント――
患者主体の意思決定に向けて」という論文の話の続きです。
これは、最近発売になった社会学者や
法律学者のみなさんがお書きになった共著、
「コンピュータ社会における 人 生命 倫理と法」という
本の中に収録されているものですが、
これからの時代「いのちを守る」ために、
いかに賢くコンピュータを活用していくか?
いかによりよいコンピュータ社会を作っていくか?
そうした問題を多角的に研究提案したものです。
僕の「ガンとインターネット体験」として、
『母はボケ 俺はガン』と『ガン患者よ、ドクハラと闘おう』
『こうすれば50歳から病気知らず』といった、
僕の闘病記が引用されています。
また、僕のようなガンのみならず、
肝臓病、心臓病、また白血病にかかわる、
「移植治療とインターネットによる
情報活用」の問題も取りあげあられています。
ご存知の方もいるでしょうが、
キリングセンスというお笑いコンビの
萩原 正人(愛称、ハギさん)が、やはり僕と同じ頃の
1999年、重度の肝硬変を患い、いったん活動停止。
2000年に米国で肝臓・腎臓の同時移植に成功し、
予後は良好で、現在もライブ・執筆活動など活動中ですが、
その体験記のケーススタディも挙げられています。※1
興味のある患者さん、医療関係者の方は、
手にとって読んでみてください。
小松さんは「インターネットは患者をエンパワーし、
医者と対等の立場に近づけ、患者主体の意思決定を実現する
強力な武器になりうる」と結論し、
以下のように、「医療とインターネット」のメリット=
これからの「患者力」を高める3つの要件を挙げています。
(1)インターネットを闘病に使うということをも思いつく発想力
(2)ネット上の医療情報にアクセスし、
玉石混交のそれを取捨するリテラシー
(高度な意味での情報リテラシー)
(3)技術的な点を含め、患者・家族をサポートする人的資源
(4)番目の人的資源とは、
ただインターネットを検索するのではなく、
僕の場合は妻や友人たちでしたが、
海外での肝臓移植に成功した萩原正人さんの場合は、
先輩コンビ・爆笑問題の大田光さんが一役かったという
回りの人たちの心温まる支援のエピソードも紹介されています。
ちなみに、学会報告ですから、専門用語が難しいわけですが、
以下説明しておきます。
●エンパワーメント(empowerment)=
力をつけること。また連帯して行動することによって
自分たちの不利な状況を変えていく考え方。
ビジネスや外交問題でも「権限の委譲」といった意味で使われます。
●情報リテラシー(information literacy)=
情報を使いこなす能力。大量の情報の中から必要なものを探し出し、
課題に即して組み合わせたり加工したりして、
意思決定したり結果を表現する知識や技能。
メディアを使いこなす能力を「メディアリテラシー」
IT技術を使いこなす「コンピュータリテラシー」といいます。
あなたの「いのち」を守る上の大切なキーワードとして、
これから頻繁に使われるようになりますから、
ぜひ覚えておきましょう。
※1 http://www.titan-net.co.jp/~hagi/
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