元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1769回
100年前の古典に学ぶ「いのち学」

40歳から魂が進化する!
いや、魂を進化させてゆったりとした人生設計をすれば、
病気を遠ざけることができるだろうし、
悔いのない人生をゆったり設計できるのではないか?
そのためにも、40歳を過ぎたら、
宗教、哲学、科学、そしていのちに関する、
長命な哲人や作家たちの古典名著を読もう、
とくに100年前、200年前の名著を読もう――
という話の続きです。

但し、僕たちは思想や哲学で学位を取ったり、
学者で生計を立てる必要などないわけで、
自らの処世の立脚点=「いのち学」
をしたたかに探し出せばよいわけですから、
自分の直覚を働かせて、先輩の哲人や作家たちと
身・魂・心が丸ごと「躍動」する
トキメキのエンパシー(共感)をすればよいわけです。
ここに自分らしい「いのち学」を
掌中にする秘訣があると思います。
ずばり、ゲーテでもヘーゲルでもマルクスでも、
ベルクソンでもヘッセでもよろしい。
歳を過ぎて人生の経験を重ねた上で、古典名著を再読することは、
10代、20代のときに受けた感動とは、
とっても違ったものになります。

さて、僕が足掛け9年にわたって、
ガンというミステリアスな
「いのちのいたずら者」と付き合ってきて
たどり着いた処世学が
「スローヘルス(温和)患者学」といったものでした。
人間のいのちを機械部品のように冷酷無比に扱うのではなく、
身・魂・心の丸ごとでとらえて、温かく和やかに
治療法も処世法も組み立てよう――、という考え方です。
その基本は、主治医である帯津良一博士から、
まさに人間丸ごとの直感を持って伝授された、
全人的医学=ホリスティック医学から来ています。
その帯津医師の理論の基本哲学はといいますと、
このコラムでも何度も紹介してきた、
100年前の哲学者・フランスのアンリ・べルクソンの
『創造的進化』にある「生命の躍動」理論にあるようです。

「自己の養生を果たしていくと、
宇宙、外界の大いなるいのちにぶつかり、
その瞬間、“生命の躍動”【エラン ビタール(Elan Vital)】=
感動の小爆発が起こって、一人一人が歓喜に満ち溢れる・・・」
これが、「いい生命の場を作る」ホリスティック医学の真髄だ」
という考え方です。
ベルクソンは、19世紀から20世紀を凌駕した唯物論や
ダーウインの漸進的進化論に抗して、
いわば、科学的唯心論を見直した人といっていいでしょう。
ま、僕は、学者や医者で飯を食っているわけではありませんから、
論争の勝ち負けに関係ありません。
ただ、ベルクソンの「宇宙、自然の大いなる生命エネルギーと
わが身のエネルギーが共感して
創造的進化をする」という理論に賛同したのは、
食事、漢方、気功、運動、瞑想
といった宙身一体の養生法を併行するなかで、
ピンチの中で、何度も、心ときめく「生命の躍動」を覚え、
希望のエネルギーを体感して、快癒してきたからです。
「人間は機械にあらず」ということをイヤというほど直感し、
ガンという全人的な病気と闘う中で、
わが身の生命が、体だけでなく、
心と魂のエネルギーを高めることによって、
なんどか、救われる思いを体験してきました。
実際、帯津医師を始め、いろいろな人たちとの「縁と運」に恵まれて、
こうしてガンを切らずに9年――、幸運にも延命してきました。

ところで「運と縁」といえば、ベルクソンの理論に共感したのは、
帯津医師に教えられたことがありますが、
もうひとつ、ガンになるまえに、
偶然読んだ100年前の書物がきっかけでした。
1913年に出された「近代人の信仰」(警醒社書店)
という600頁の本です。
著者・内ヶ崎作三郎さんは英国遊学中にオックスフォード大学で
生身のベルクソンに会い、
そのときの「生命の躍動と創造的進化」に関わる
講演の實見録がこの本に収録されていたのです。
内ヶ崎さんは、明治・大正・昭和に活躍した自由主義の思想家で、
最後は衆議院副議長も勤めた、僕の祖父の盟友です。
不思議ですね。たまたま祖父の伝記を調べる必要があって、
僕は100年前の内ヶ崎さんの著書に遭遇し、
はたまた「哲人・ベルクソン」に遭遇していたことになります。
こうした偶然の積み重ねを「神の配剤」などと言えば、
なんともいかがわしい神秘主義者の弁のように聞こえる
かもしれませんが、
僕自身、知らず知らずのうちに、100年前の実録古典によって、
身・魂・心丸ごと、中年からの
「いのち学」を身につけていたことになります。


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2007年7月1日(日)

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